【プレミアム】AMPは効果があるのか?実際の事例と導入方法は?(2) FavoriteLoadingあとで読む

: 丸山 耕二
AMP導入について迷っている人へ。AMPについての導入基準をお伝えしています。2回目はAMPを試した実験結果からの考察をまとめています。

まずウェブ担当者通信事務局で把握している内容をお伝えします。

実際のデータ

※3月14日〜31日までの間、WordPressで作られたサイトで検証しました。プラグイン+テンプレートをカスタマイズして全ページAMP対応しました

▼Googleサーチコンソール AMP導入前後の比較(モバイル端末だけフィルタ)

Search Console AMP導入前後比較

比較左側の3月14日〜31日が導入後です。ほとんど変わらないことがわかると思います。

なお、このデータを出した後AMPページは削除したのですが、導入前後ともアクセス数はずっと変わりませんでした。

AMP導入試験運用からの考察

  • 普通に導入するだけではアクセス数は増えないと思った方がよい
    • AMPページに対応すると、特定の記事の流入は増える。特に更新日付の新しいページ
    • しかし古い記事ではSERPs(検索結果)に表示される更新日付が古くなりCTRもダウン。むしろ流入が減る
    • 結局、全体としてアクセス数はかわらない傾向に
    • AMPカルーセルにも表示されるかどうかはわからない(時の運。記事の更新日付も重要と考えられる)
  • 既存ページのアクセス数は減り、AMPページのアクセス数が増える
    • 既存ページとAMPページ(Googleのキャッシュサーバー上に存在)でアクセスを分け合うことになる
    • つまり既存ページのアクセス数は「減ったように」みえるが、実はAMPページにアクセスが割り振られる
    • 全ページAMP対応すると既存ページ6割、AMPページ4割程度の割り振りになる
  • Googleアナリティクスでアクセス数を正確に把握することが困難になる
    • AMPページと既存ページで別サイト(クロスドメインのような)扱いになる
    • しかしAMPはJavaScriptが稼働しないため通常のクロスドメイン設定ができない
    • したがって正確にアクセス数を把握するにはPHPなどを用いてCookieのコントロールをしなくてはならない
  • AMPページは適当に作ると簡素になるため成約率が下がりやすい
    • JavaScriptが動かなかったり50kb以上のCSSが動かないため簡素なページになり、適切なナビを入れないと次ページへの遷移が減りやすい
    • AMPページの直帰率はあがる傾向(AMPページのデザインなどにもよるが10%以上あがる可能性あり)
    • ページに貼っているAdSenseなどの広告は表示が遅くなり、クリック率が少し下がりやすくなる
    • AdSense広告の平均単価も下がりがち(既存ページとは別扱いのためだと考えられる)

次に、一般公開されているブログで発見したAMPの効果に関する感想をサマリーしてお伝えします。総じて同じような話になっているようです。

一般公開されているブログで発見したAMPの効果

  • AMPには当たりハズレも多い。あたる記事もあればあたらない記事もある。
  • 狙っていないキーワードで表示されたページもある。予想外の流入をよぶ。
  • とはいえ新しい記事の流入効果はすぐに終わってしまう。
    • ※予想ですが、これはAMPカルーセルに表示されたのだと推測しています。

AMPの導入はどのページで行うべきか?

現状AMPの流入プラス効果は、はっきりいって更新日付が新しいページでしか実感できないと思います。

したがってAMP対応をやってみるならば、ウェブ担当者通信としてお勧めしたいのは「更新頻度の高いページ」や「瞬間風速のでるニュースを扱うページ(例えば旬の芸能人のネタなど)」のみです。

ただしアクセスは稼いでもJavaScriptが動かないことから、広告のクリックなど何かリッチなアクションをしてもらいたい場合にはAMPページは苦労します。

どちらにせよAMP対応はページ単位で考えましょう。少なくともサイト全体をAMP対応するのはほとんどの企業にとって、導入負荷の割にメリットはないでしょう。

もし可能ならば「AMPは導入しない」と決めるのも一つの手です。多くの企業サイトにとってほとんどメリットがないのが現状のAMPだからです。

前回記事(1)で、AMPが「企業のウェブサイトにとっては悩まししい存在かも」と書きましたが、現段階でのAMP導入はほとんどの企業にとって時期尚早かもしれません。

ユーザーファースト

一方でモバイルユーザーにとっては、AMP対応ページはメリットが多いです。

  • 表示が早い
  • 必要な情報をさっと読める
  • SERPsに更新日付が表示されるので新しい記事を選択して読める

これを辛辣に読めば「さっさと最新の記事をよんで満足したいので、企業はがんばってください」ともいえます。しかしそれがユーザーの望みなのも事実です。

したがって茨の道ではありますが、しっかりしたAMP対応ページを作成できればユーザーから好印象に捉えられるかもしれません(ブランドを覚えてもらうほどのトラフィック量があることが前提ですが)。

またユーザーファーストを掲げるGoogleは、今後もっとAMP対応ページを優遇してくる可能性もあります。
現状JavaScriptが使えないAMPも、amp-bindといった拡張機能(まだ開発中)が登場し、自由度があがってきています。

したがってこの章をまとめるならば、下記のことがいえると思います。

AMP対応は、現状と未来でわけて考えるべき

  • 現状で考えるなら「更新頻度の高いページ」か「瞬間風速のでるニュースを扱うページ」の二択
  • その中でもJavaScriptがうまく動かなくても構わないコンテンツのみ対応する
  • 未来で考えるならば、Googleが追従することも考えてモバイルサイト自体をAMP対応してもよい
  • しかしAMPにはまだ開発中の仕様も多く、自由度も低いため、ほとんどの企業にとって手を出すには時期尚早といえる

AMP対応チェックリスト

これらのことを踏まえて、あなたのサイトがAMP対応すべきかチェックリストを作ってみました。4つ以上当てはまるならば更新頻度が高いページに対してAMP対応を行ってもよいでしょう。

 1ヶ月に数回更新するページがある 
 モバイルユーザーがページアクセスの半分以上を占める
 ビッグキーワードを狙っており、その関連ページの更新頻度が高い
 JavaScriptが動かなくても困らない
 未来への投資、もしくは職業柄AMP対応をやってみる必要がある。もしくはやってみたい
 現状サイトの表示スピードが遅く、AMP対応しているとユーザーのメリットが大きい 

番外:通信環境が悪い国でのAMP

番外ですが、もし通信環境の悪い国でサイトを展開しているならばAMPは良い選択肢かも知れません。表示スピードの優先順位がかなり高いからで、実際に成功事例も出てきています。
>AMPとPWAのコンボで表示速度とコンバージョンを劇的に改善したフライト検索サイトのWego | 海外SEO情報ブログ

記事ではPWAやAMPなど三文字の単語が連発されていて凄そうですが、平たくいえば「インドなど通信環境の悪い国の航空券検索システムだったので、なんとかしたいと思って、まずAMP対応してページの表示速度を爆速にした。次に主にAndroidユーザーが使えるウェブアプリ(PWA)をキャッシュしてもらって、操作感をよくした。そしたら成果が出た。」ということが書いてあります。

PWAはプログレッシブウェブアプリの略で、ブラウザ上で動くアプリを作れる仕様です。従ってプログラミング言語はJavaScriptがメインになるので、PWAをAMP対応するのは苦労します。今回の事例でもPWAををAMP対応したわけではありません。あくまで組み合わせて成果を出したという事例です。

AMP導入作業チェックリスト

AMP対応をすると決めた場合のチェックリストを掲載します。もしチェックが7個以下の人は、気軽に導入すると苦労することになるかもしれません。AMPをわかりそうな技術者をアサインするか、もしアサインできない場合は「実験的に作業をする」と思って、結果が思わしくない時にはすぐに戻せるようにしておきましょう。

あなたのチームはAMPを導入すべき?チェックリスト

 Googleアナリティクスのプロパティとは何か説明できる
 Googleアナリティクスの「_ga」Cookieが何のことだかわかる
 英語のHELPドキュメントを読むことができる
 HTMLとCSSがわかる
 JavaScriptの非同期処理と聞いて何のことかわかる
 WordPressなどCMSのテンプレートを自分で作ることができる
 Googleサーチコンソールにログインできる
 構造化データをJSON-LDでマークアップできる
  

次回は、いよいよ具体的なAMP導入手順についてお伝えしていきます。

丸山 耕二
この記事を書いた人: 丸山 耕二

ウェブ担当者通信の発起人。
株式会社ウェブジョブズ代表。
コンサルティングの他、ウェブ担当者教育などにも力を入れ、株式会社インプレスビジネスメディア社の運営するウェブ担当者フォーラムにて「誰もが受けたい!アクセス解析5 分クリニック」を連載。
著書に無料でできる! 世界一やさしいGoogle Analytics アクセス解析入門(秀和システム)
WPプラグインQA Heatmap Analyticsのプロダクトマネージャー