【プレミアム】『サイボウズ式』編集長 藤村さんの社内を巻き込むコミュニケーション仕事術 第2話 FavoriteLoadingあとで読む

: 事務局
連載第2話は『社内外でオウンドメディアへの評価を熟成させていく仕組みづくり』についてです。社内では意見を活発に交換し浸透を深め、外部のライターに対してはある基準を軸に評価していく。組織としての風土がとても感じられるインタビューとなりました。

第2話

目次

◆2-1 オウンドメディアに対する社内評価の方法

ウェブ担当者通信編集部 丸山

 

丸山:「ウェブ担当者通信」の読者のなかには、企業内で働かれている人も多いので参考に伺いたいのですが、この「サイボウズ式」は会社からどう評価されるのでしょうか。一般的にオウンドメディアで仕事の評価をするにはすごく難しいと感じるのですが、今のところ御社ではいかがですか?

藤村:サイボウズではあらゆる仕事が評価の対象になってくるので、もちろんオウンドメディアも評価の対象になります。ただ、評価の仕方を厳密に数字では見ていないというのが、他の企業とは違うところではないかと思います。

メディアを運営していると、とかくKPIなどの話が、評価のなかで話題になりがちですが、サイボウズ式では数字的なKPIは置かずに、むしろその企画を出したことで、サイボウズのブランド作りにつながるか、を見るようにしています。

これが最初のご質問でいただいた、編集長の仕事の3つ目に関わってくるのですが、出した企画に対してユーザーの反応をしっかり見ながら、その結果を次の企画に回していくということをやっています。

ウェブ担当者通信編集部 丸山

 

丸山:ソーシャルの反応などは、チェックされますか?

藤村:そうですね。ソーシャル上で出した記事に「どういうコメントが起こったか」と、そのコメントによって、その人は「この記事に対してどういった感想を抱いたのか」などを、あくまでも目視を中心に定性的に確認しています。特に数字化はしていなくて、その反応を元に、みんなでワイワイ議論をしましょうという感じです。

実は、この反応を、全社で見たい人に自由に共有する場所を設けています。オープンにしていますので、見たい人はいつでも見られるようにしています。ですから、ほかの部署の社員がユーザーの反応に対するコメントをしてくれることもあり、盛り上がったりしますね。

チャット

 

おもしろいのは、副社長の山田など、経営層クラスの人たちも一緒になって盛り上がっている、という点です。

丸山:ふだん別部署にいらっしゃる社員の皆さんが、コメントを残して、その場でディスカッションが発生することも結構ありますか?

藤村:ありますね。むしろ積極的に私の方から話しかけるようにしています。

例えばコーポレートブランディング部長の大槻のつぶやきに、弊社のグローバル開発本部長の佐藤がおもしろいコメントをしたり。こうしたコミュニケーションの発端がグループウェア上で、そこかしこで起こっているので、それを私たちが拾って企画にさせてもらう、ということもやっています。

社内にある情報を、編集によって新しい価値に変えて出していくというだけで、おもしろい情報ができるのではないかなと思っています。

◆2-2 ライターの評価は「ブランドの貢献度」を定性的に確認する

藤村さんとウェブ担当者通信編集部 丸山

 

丸山:ライターさんについて、お伺いします。編集者として外部のライターの方にも、関わっておられますが、その方々も先程の共有場所に参加することはできるのですか?

藤村:サイボウズの社内だけになっていますので、社外の人は現状入れないようになっています。

丸山:外部のライターの皆さんに、記事の反響やアクセスなどの報告をする場合には、どうなされているんですか?

藤村:いい反響があった場合は、逐一「これぐらいのPVが出ました」と共有しています。ただ、もともとサイボウズ式自体でPVをいくら稼ぎたいとか、そういう評価の仕方をしていません。

あくまで、私たちの大きなミッションはサイボウズの「ブランド」作りです。その1つの手段としてのサイボウズ式なので、その貢献度を評価するという感じですね。

丸山:藤村さんからも、先程「定性的」という言葉が出ましたが、ライターを担当される方々には、それぞれの頑張りをどのようにお伝えしていくんですか?

藤村:まず、社内の者でいうと、基本的に評価をするのは人事部やマネージャーになります。 マネージャーは弊社の部長以上のクラスです。うちの部署で言えばサイボウズ式を作った部長の大槻が、私も含めて、編集部の頑張りについて判断をして、人事とやりとりをすることになります。

社外のライターさんはそこには入ってこないので、結果を共有する程度でしょうか。

丸山:「このライターさん、頑張っているな」「良い記事書いてくれたな」というような評価ですか?

藤村:そういった感じです。

丸山:これは、社風もかなり影響があるのではないでしょうか。メディア活動が「どのような価値を持って続けられるものなのか」ということが、全体的に浸透されている感がありますね。

藤村:そうですね。2017年5月でサイボウズ式を運営して丸5年になるのですが、ようやく社内でも「サイボウズ式、いいね!」という風に広がってくるようになりましたね。徐々に信頼度が上がっていったというのが正直なところかなと思います。少しずつ少しずつ、積み上げていきました。

◆2-3 サイボウズのブランディングを、社外に広く浸透させるきっかけとなった
「営業チームで子守をした話」

「両親の代わりに営業チームで子守をした話」大事な商談の日なのに、保育園に預けられない──両親の代わりに営業チームで子守をした話

 

藤村:こちらは、サイボウズ式で過去一番ヒットした記事なのですが、「両親の代わりに営業チームで子守をした話」というタイトルです。

サイボウズの営業担当が自分のスケジュールミスで、大事なお客様への訪問と、子供を保育園に預ける時間がバッティングしてしまった。「これまで営業担当として頑張ってきた大事な案件だから、どうしても自分に回らせてほしい」という話を周りにしたところ、その結果として、営業部長と若手メンバーの2人が子守りを担ったという話です。

サイボウズはチームの会社なので、誰かがピンチだったら他のところが助けようというのが当たり前で、「普通の話だなぁ」程度に思っていたのですが、いざ公開してみると、「いいね」が2万件以上押されたり、はてなブックマークもたくさんつきました。PVは15万ぐらいまで膨れました。

記事を出すまでは、この記事の価値は僕達にはわからなかったんですね。ですが、出してみてこれだけ反響があったということは、少なくとも第三者にとってこの情報は価値があるということがわかったんです。

例えば、弊社営業のお客様のフェイスブックから「サイボウズ、こんなことできる会社なんだ。すごいね」みたいなものが流れてきたりすると、こういう情報をメディアに出せることが、お客様にとってもサイボウズの価値に繋がるんだと。

まとめますと、この件で気付けたことが2点あります。

1点目は、僕達がやっていることを社内で評価するのは難しいし、その方法も正しいのかどうかはわからないものですが、第三者のフィルタを通じて「いいね!」と言われると、これで良かったんだと思えたことです。いわば「クチコミ」みたいなものですよね。

2点目は、「いいね!」と思ってもらうまでコミュニケーションを取り続けるということです。些細なことでもどんどんコミュニケーションをして、

・なぜ「サイボウズ式」では、こういうことをやっているのか?
・このやり方をやっているのには、こういう理由があるんですよ

とか、もちろん直接は伝えないですが、軽い感じで、興味を持ってくれた人とやりとりします。

そうしているうちに、「あー『サイボウズ式』ってこういう感じで運営しているんだ」というのが段々と別部署の人にも浸透して、それが理解に繋がっていった、といった感じですね。

『サイボウズ式』編集長 藤村さんの社内を巻き込むコミュニケーション仕事術 第3話:メディアのビジョンを軸にした「コンテクスト」と「編集」 につづく

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