米国ビジネススクールのベントレー大学が、労働市場分析会社を通じて近年どんなビジネススキルが必要とされているかについて調査をしています。この調査で、2011年から2015年にかけて最も需要が増加したITスキルの第3位にTableauの名が挙がりました。
私の周囲でもTableauを業務で使う機会がすこしずつ増えていますが、たくさんのデータを扱う私の仕事においては、便利で頼もしいツールです。これからますます必要性が増し、活用の幅が広がっていくツールではないかと考えています。
そこで今回の記事では、Tableauをこれから使うことを検討している方のために、使うことで何が便利になるのかを、自身の経験に照らし合わせて共有したいと思います。
広告のプロジェクトで起きがちな、現場担当者と経営者のすれ違い
私はリスティング広告をはじめとした運用型広告にまつわるコンサルティングの仕事をしており、ふだん顧客のリスティング広告を軸としたプロジェクトに参加しています。
リスティング広告を何らかのかたちで経験したことのある方ならピンと来ていただけるかもしれませんが、リスティング広告のMTGで話される会話は、「細かい」と言われます。
例えば、下図を見てください。
広告を使って、複数の施策が展開されています。
そしてそれぞれに、検索広告やディスプレイ広告など、さまざまな広告が活用されている。
それらの広告はPC、スマホ、タブレットに配信されていて、複数の広告が走っている。
その成果は…と、どんどんドリルダウンをしていけるようになっています。
あなたがガッツリ運用している現場の担当者ならば、もはやここに挙げた例程度で特に細かいと感じることはないかもしれません。
しかし「施策Aで行なっているAdWordsのスマートフォンの広告ABCのクリック率を比較した結果」を経営者に報告した際に「うーむ、よくわからないな…」という表情をされた経験が過去にあるのではないでしょうか。私にはあります。
これはなぜ起きるのでしょうか?
現場の担当者が「施策Aで行なっているAdWordsのスマートフォンの広告ABCのクリック率を比較した結果」について詳細な報告をするからには、これまでの経緯があるはずです。
例えばここ数ヶ月、行なっている施策のうち、施策Aの成果が堅調に伸びており、広告「全体」の成果に大きなインパクトを与えている。
特にAdWordsのスマートフォンでCVが取れており、クリック率を伸ばして集客を増やすために広告を追加してテストをしている、など。
しかし多くの場合、経営者はその報告がどのように自社ビジネスの「全体」につながるのか、つながりを見失ってしまっているのです。
広告に全体があるように、ビジネスにも全体がある
広告に全体があるように、経営者から見た自社のビジネスにも全体があります。
その全体が見えている経営者からすると、現場の担当者が見ている「施策Aで行なっているAdWordsのスマートフォンの広告ABCのクリック率を比較した結果」は、視野がせまいものに映るかもしれません。
少なくとも、この結果の報告によって経営者が何かアクションを起こす判断をすることは難しいでしょう。
では実際のところ、現場の担当者の報告に価値は低いのでしょうか?
私はそうは考えません。現場の担当者はユーザーに最も近い場所で仕事をしているからこそ、日々重要な気づきをインプットしているはずです。
しかしながら、ほとんどの場合、その重要な気づきを経営者と共有することができていないのです。
それは企業にとって大きな機会損失になっていると言えるでしょう。
このように、現場の担当者と経営者のすれ違いは、立場がちがうゆえに視点が異なることからうまく伝わりにくい状況なのだと考えられます。
つながるから伝わる、Tableauの可能性
ここでようやくTableauが登場します。
Tableauは、この現場の担当者と経営者のすれ違いを埋めてくれる可能性を持っています。
Tableauとは
Tableauとは社内外にある膨大なデータを活用し、経営戦略や企業の意思決定を高速化させるデータビジュアライゼーションツールです。
私が所属するアユダンテ株式会社もTableau社認定アライアンスパートナーです。
Tableauは製品のインターフェイスの作りが非常に良く、比較的短い学習時間でデータをアドホックに分析したり、かんたんにダッシュボードを作成し組織内で共有する事を可能にします。結果的に、Excelで長い時を費やしたが思うような結果が得られなかった、というような課題から開放されます。
また各種データとの接続性が非常に高く、手元にあるExcelデータと組織内やクラウドのデータベースを繋げて分析するといった事が、非常にかんたんに行えます。
引用:アユダンテQuick DMPサービスページより抜粋
重要なポイントは「つながり」
重要なポイントは「つながり」です。
Tableauに取り込んだデータは、2回目以降に実際に画面を見ながら説明していきたいと思いますが、「全体」の視点と、「個別」の視点を行き来するような動きのある表現が簡単にできます。言い換えると、「個別」から「全体」へ、あるいは「全体」から「個別」への「つながり」が常に保たれます。
そのため、前述のように現場の担当者が「個別」の詳細な報告をしている際にも、経営者が文脈を見失わなくてすみます。必要に応じて、細かく分解したりまとめたりを行えばいいのです。
この「つながりを保ったままでの全体/個別間の自由な移動」は、私がTableauに触れて最もメリットであると感じたものです。
現場の担当者と経営者のすれ違いを解決
上記の現場の担当者と経営者のすれ違いの例を解決するには、さらに、現場の担当者が広告の「全体」だけではなく、経営者の捉えている自社ビジネスの「全体」の視点に立つことが重要だと考えます。
例えば広告だけでなく、GoogleアナリティクスのデータもTableauに取り込む。そうすることで、全体を俯瞰し、他のチャネルと比較した上で広告を評価することができます。
下図をご覧ください。
構造自体は最初の図と変わらないのですが、前回よりも経営者が自社のビジネスを捉える視点に近づいています。
そもそも広告を出稿している主力事業Aについての話であり、広告はその集客チャネルの一つであり、そのチャネル間でスマートフォンページの比較をすることによって、ユーザーにささるポイントが浮かび上がっている。
その結果、経営者は現場の担当者から得られた気づきに基づく次のアクションを事業Aだけにとどまらず、事業Bにも活かそうというアイデアが生まれています。
まとめ
このように、視点を経営者の「全体」に合わせることでつながりが保たれると、現場の担当者の気づきに基づくアクションは、成功したときには大きくレバレッジがかけられるようになります。
こうした手助けをしてくれるツールが、Tableauであると私は考えています。
これも2回目以降に紹介していきますが、Tableauにはさまざまなデータを取り込むことが可能です。例えば、以下のようなデータを取り込むことができます。
- 今回上げた広告のデータ
- Googleアナリティクスのようなアクセス解析のデータ
- 自社の顧客データ
- 天気や気温などのオープンデータ
それらのデータをつなげて組み合わせることで、これまで見えていなかったユーザーの行動や心理に分け入ることができることが、今後Tableauの必要性が増してくるポイントだと考えられます。
データのつながりから、経営者も現場も同じ視点で仮説を引き出し、次のアクションを起こしていく。
そんな心強い武器となってくれるTableauに興味を持った方は、ぜひ使ってみてください。
Tableauを業務で使うと便利になること(2)につづく
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