今回のコラムは、とある通販会社(仮にA社と丸山商店)のたとえ話から、宋襄の仁という故事を説明したいと思います。
A社は総合小売サイトとしてスタートし、その商品点数の豊富さからあっという間に急成長していました。
他の通販サイトはモール形式が伸びていて、自社の通販サイトを頑張っているところもありましたが、あまり影響力はありません。A社はどんどん商品を増やすことでモールに迫ろうとしています。
一方、丸山商店は三代続くお店。独自の仕入れルートを持っていて常連顧客を持っています。
通販も自社サイトで行っており、売上は堅調に推移していました。急成長することは目標ではなくて、お客様の役に立ちながら身の丈の経営を目指しています。
ある日、A社の担当者が丸山商店にやってきました。独自の商品がとても気に入ったので扱わせてくれないか?と言うのです。
A社の理念も交えながらとても情熱的に語るので、丸山社長は感心してしまい、A社に卸してもいいかな?と思っていました。
良い商品を広く知ってもらうのは良いことだし、自分たちの身の丈経営に限界も感じていたからです。
A社との取引を開始するかどうかの会議が始まりました。丸山社長はA社の担当の素晴らしさばかり話します。
それを聞いた東郷専務はこう言いました。
「口では何とでも言えます。A社は我が社の仕入れルートと商品に興味があるだけで、丸山商店は眼中にないでしょう。この取引はやめるべきです」。
相手が見ているのは成長と売上。自社が見ているのは顧客の信頼。急成長するA社との考え方のギャップを感じたのです。
それを聞いた社長は、「東郷専務、その気があるなら最初から仕入れ先を探してそこに話をするだろう。我が社に来たということは仁義を守っているということだ。何もかも疑っていたら世の中の人たちがみんな泥棒に見えてしまう。私はA社と取引をしようと思う」と、専務を諭しました。
社長にこういわれてしまっては東郷専務も何も言えません。
こうして、A社と丸山商店の取引が開始されました。
A社はじわじわと販売力を見せてきます。
はじめは扱う点数も少なかったのですが、ユーザーの反応が良いことがわかると取扱数も増やし、商品もユーザーの目につくところに表示するようになりました。
丸山商店はというと、常連顧客の売上は変わらないもののA社の勢いに押されがちとなってきました。東郷専務は居ても立っても居られなくなり、「社長、このままでは我が社がA社に飲み込まれてしまいます。相手が顧客を奪う前に商品を卸すのを止めましょう!」と社長に迫ります。
しかし、社長は「A社に卸すのをやめてしまえば、そこで注文した人たちに商品が届かなくなってしまう。つまり商品自体のイメージが落ちてしまうということだ。私にはそんなことはできない」。ユーザーのことを持ち出されると、東郷専務もこれ以上強く言うことができませんでした。
ある日、東郷専務はA社のサイトを見ていて目を疑いました。なんと丸山商店から仕入れるはずの商品がA社で独自に販売されていたのです。しかも、丸山商店よりも安い値段で。
A社に連絡しても担当者が不在と繰り返すばかり。
こうなってしまっては丸山商店になすすべはありません。値段が安いとなっては、常連顧客もそちらに流れてしまいます。
まんまとA社にしてやられてしまったのです・・・。
この事実を知った丸山社長は東郷専務に言いました。「なあ、東郷専務。自分が裏切るよりも、裏切られたほうがいいよな」。
「嗚呼、丸山社長は仁君であられる!」。東郷専務は天を仰いでこういうしかありませんでした。
『宋襄の仁』
www.asahi-net.or.jp/~bv7h-hsm/koji/soujo.html
いろいろなところに書かれていますが、上記リンクがとてもわかりやすかったので紹介します。
故事って読んだ時は昔のことだから自分に関係ないと思いますが、こうして実際にありそうな話を読んでみると自分ごとになってきますよね。
これから自分に起こるであろうことに対処するために歴史を勉強してみてはどうでしょうか?
ほにゃららマーケティングよりも得られるものが大きいかもしれませんよ。