ウェブサイト制作時の写真撮影や動画撮影で気をつけたい、被写体や写り込んでしまった人などに対する権利「肖像権」を解説。後編では、実践に撮影するときに注意していることや、肖像権のみならず著作権への配慮についても、事例を交えてお伝えします。
鍋坂が実際に撮影するときに注意していること
被写体に説明する際にやっていることは?
- 所属や名前を伝え挨拶をする
- 広告主や使用用途・使用期間を伝える
- 顔を出すことがOKかNGかを確認し、配置やポーズを伝える
以上でほぼ大丈夫かと思われますが、以前一度だけ、被写体の気分が変わったとのことで、撮影後広告主へ連絡があり使用NGになったことがあります。
念のため広告主、被写体、私(カメラマン)立会いの上データの削除を行いました。
タレントなど有名人の撮影の場合は?
撮影意図を伝えると同時に、被写体のイメージを崩さないように、撮影アングルやポーズなどNGはないか確認しました。
公道での撮影で注意することは?
公の場で撮影する際、肖像権の侵害になりにくいことはこれまで解説しました。
なるべく人物が真正面から写らないようにしても、撮影したい範囲の中に人の流れが途切れない場合があります。
時間がかけられる場合は待ちますが、時間内に撮影を終えるためになるべく人が写らない撮影ポイントを探すか、人が写っても影響が少なくなるようタイミングを見計らいます。
被写体に対する配慮と同時に、人物が写った場合の写真の雰囲気も注意します。
コーポレートサイトの場合、通年見られる可能性があります。
肖像権の話とは少しずれますが、季節感が出過ぎないように写り込む人の服装へも意識するとよいでしょう。
人物の流れを意識しつつ街の様子を撮影
イベントでの撮影では?
掲載意図によっても見せ方が変わりますが、イベント記録撮影の主役は登壇者やスタッフの場合が多いです。
記録撮影すること、後日ウェブサイトで写真を使用することを伝えた上で、参加者は正面から撮影するのではなく背中側から撮影し、個人が特定されないよう気をつけましょう。
撮影担当者は運営スタッフとわかるような衣装や目印をつけるとよいでしょう。
POINT 著作権への配慮
人物に対する権利として配慮しないといけないのが肖像権ですが、写真や動画を撮影する際、建物などモノに対しては著作権を配慮しておきましょう。
- ・屋外での建物
- 芸術性の高い建物(美術品として作られた建物)が写りこまなければ著作権の侵害になりません。
ただし、その中で撮影をする場合や、芸術性のある建物でも著作者没後50年を超えていれば著作権の侵害にはなりませんが、管理者に承諾を得る必要があるため事前確認が必要です。
- ・有名店の料理
- SNSで公開されることが多い被写体です。
料理は著作権の対象とは認められていませんので、著作権の侵害にはなりません。
ただし撮影を禁止している場合があるため、店の許可をとりましょう。
- ・有名美術品の撮影
- 著作権は大きく「著作者人格権」と「著作財産権」に分かれます。
著作者人格権は著作者が逝去と同時に失効します。
著作財産権は関わるのが著作者だけではないため、没後50年で失効します。
この条件が整えばパブリックドメインとなり、誰でも自由に利用できます。
- ・写真の著作権について
- 被写体の条件をクリアした場合、撮影した写真の権利はカメラマンに帰属します。
被写体に撮影用途を伝えるのと同様に、カメラマンへも使用用途を明確にし、写真を二次使用する場合は追加費用を確認するなど、撮影した写真の取り扱いについても撮影前にカメラマンと契約を交わすことをお勧めします。
まとめ
今回は肖像権について解説しました。
ウェブ制作やSNS・ブログ運用に携わる中で、なんとなく人物写真を撮影していた方もいるかもしれません。
ただ、社会人としてのマナーをもってすれば裁判など大きな事故になることはないでしょう。
撮られる側の気持ちに立ち、嫌悪感を持たれないよう配慮して撮影を行うようにしましょう。