【プレミアム】未来はすでに来ていた!ウェアラブル業務活用事例と企業間コラボ(2) FavoriteLoadingあとで読む

: 事務局
10年以上前からウェアラブルデバイスの業務利用に着目し開発を続けてきた村田機械株式会社。マテハン分野において世界規模の売上を誇る村田機械がなぜウェアラブルに取り組んだのか?ウェアラブルの「今」を聞いてきました。全4回連載で2回目は「ARとVRの違いとウェアラブル業務活用に至るまで」です。

ゆびキタスピッキングデモ

ARとVRの違いとウェアラブル業務活用に至るまで

目次

ARとVR、何が違うか知っていますか?

スマートグラス市場からGoogleが撤退したことやPlayStationVRの発売など、スマートグラスに関するニュースはよく見ますが、スマートグラスやウェアラブルデバイスってこれからコンシューマー向けにも広がりを見せていくんでしょうか?

まずVR/AR。違いが分かりますか?

VR Virtual reality:仮想現実
PlayStation VRなど、仮想空間上でまるで現実世界のようにリアリティを構築する技術。没入型。
AR  Augmented reality:拡張現実
撤退したがGoogle Glassなど、現実に見えているものに追加して情報を加え拡張させる技術。ポケモンGOやIKEAのARカタログもAR技術のひとつ。

さらにMR(Mixed Reality:混合現実)、SR(Substitutional Reality:代替現実)があります。

VR技術はまだ今はゲーム中心ですが今後は教育・学習などに利用されていくと考えられています。一方AR技術は、ビジネス活用・業務利用が進んでいっています。

スマートグラスとセットでよく耳にしますが、VR/ARはウェアラブルデバイスと必ずセットとなる技術ではありません。ポケモンGOを例としてあげたことからも分かるように、VR/AR技術の活用にはデバイスに制約がないんです。

ウェアラブルと言っても結構範囲が広く、コンシューマー向けで有名なのはスマートウォッチでしょうか?マラソンなど運動をしているときのバイタルデータを個人で管理をしたり、日々の健康管理をしたり、ということで使っていますよね。

これからのウェアラブルデバイスの利用シーンとしては、趣味嗜好で使うのではなくて本格的に特化した業務やサービスとして使われてくると思います。

たとえば、スマートウォッチ。外や高所、炎天下など厳しい環境で作業をしている人のバイタルデータをとって異常値を検出して早めに休憩をとってもらうなど未然に事故を防ぐ、とか活動のデータをとる、などの業務用途が考えられます。

また、コンシューマー向けにスタイリッシュな形、という名目で試作・発売されているスマートグラスのモデルは、業務に使うには小さすぎて、見せられる情報が少ないです。パッと見て人間の脳が理解できる文字の大きさにしようとすると4,5行くらいしか情報が出せなくなってしまいます。

スマートグラス、と一言で言っても、業務用で使えるものとコンシューマー向けのものはやはり違うんですよ。

コンシューマー向けスマートグラスはやはりARよりもVRでしょうね。いわゆる没入型で大きなスマートグラスVRでゲームを楽しんだり、映像を楽しんだり、のほうがコンシューマー向けは進むと思います。
コンシューマー向けARはスマートフォンで今のところは充分じゃないかな?と感じています。

スマートグラス活用のアイデアを思いつきコンセプトモデルの開発着手は10年以上前から

村田機械さんは2004年頃からスマートグラス/AR分野への取り組みを始めたとお聞きしていますが、きっかけとどのように進めていかれたのかを教えてください。

「自動認識」がキーワードです。

物流は、現場の作業者が作業をして成り立つことです。自動搬送機器とか仕分け機器とか無人搬送など、村田機械のソリューションの中でもっとも大きな売りではありますが、全体のシステムを考えたら「人」が絶対に外せません。

人が作業をしていく中で、機械と変わらぬ生産性であったり品質の担保だったりが求められます。そして人が活動をした結果などをどれだけ自動で入手できるか、それをデータとして捉えていく必要性が出てきます。
たとえば、物流の作業現場では以前から比べるとデジタル化が進んでいっています。

以前は、印刷された紙の帳票リストを見ながら「この棚からAをX個とる」とピッキング作業をしていました。作業完了したものにレ点をつけたり押印したりして、作業終了後リストを回収しコンピューターにオペレーターがデータを入力していました。

次にはハンディターミナルの登場です。
コンピューターからの指示を正確にリアルタイムに場所にこだわらずハンディターミナルで受けることができるようになりました。ハンディターミナルについているバーコードリーダーで検品しその作業完了データがリアルタイムで管理できるようになりました。

ハンディターミナルは確かに便利で使えるものなのですが、作業者側に立つと作業の邪魔になります。
物流の作業者の目的はピッキングをしたり商品を取り揃えたり棚に戻したりすることです。データを入力することが目的ではありません。
しかし、現場マネジメント側からすると、作業データをコンピューターで管理をしないと効率的な作業が成り立ちません。

つまり、帳票の時代にはリアルタイム性がなくデータ入力をする二度手間が発生していました。そしてハンディターミナルでは作業者に負担をかける無駄が発生していました。

本来、自動認識の世界では、機械が動いたときと同様に、人が動いても自動的にシステムで認識できてデータがリアルタイムで管理され、しかもハンズフリーであることが一番の理想でした。

2004年ごろ、モノの自動認識はRFIDで、と考えていました。

「作業者がいちいち画面を見なくてもよい」「オペレーションしなくても声を自動認識してリアルタイムでコンピューターにデータが入る」「完了したら次の指示が自動的に表示される」
これが可能でかつ人の作業の邪魔にならないデバイスを考えていたときにスマートグラス(当時はヘッドマウントディスプレイ)を知り、これは使えるんじゃないか、と思いついたことがはじまりでした。

当時、鈴鹿8耐のレースクイーンがヘッドマウントディスプレイをつけてスタイリッシュに歩いたり見せていたりしたんです。それを見たときに「これはこういう世界だけじゃなく、もっと使えるはず」と思いました。

今でこそ当たり前ですけど、おそらく当時ヘッドマウントディスプレイを物流倉庫や保守メンテナンスで使える、と考えていた人はごくごく少数だったと思います。一部のIT技術者しか知りませんでしたし、目新しさだけがまず取り上げられた感がありましたから。

好奇心もあり早くからキャッチアップして、さまざまなヘッドマウントディスプレイを検証していきました。
2004年頃当時ヘッドマウントディスプレイを発売していたのは海外製か国内では1社くらいしかありませんでした。しかも海外製は品質が悪く長時間の利用に耐えない、などがあり、使いたい業務の分野での活用はまだまだ難しい状態でした。

今でもデバイスの検証は引き続き行っていますが、その後大手電機メーカーB社さんから「村田機械さんがヘッドマウントディスプレイ業務利用にかなり注力されているのでぜひ一緒に開発をしませんか?」とお声がけをいただきました。
村田機械がシステムおよびスペックインを行い、それに合わせてB社さんがデバイス開発をしていく、企業間コラボで開発を進めていきました。

ゆびキタスソリューション開発の経緯

ゆびキタスソリューション開発の経緯(村田機械株式会社)

2005年にRFIDの共同研究をやっていた某流通会社さんに、「物流の現場でヘッドマウントディスプレイを使えば革新的なことができるはず」、というアイデアをお話ししたところ「おもしろい。新センターでぜひ採用してやってみたい。」と言っていただきました。
残念ながらこのときは途中で計画が頓挫してしまいましたが、もしこの時期に導入ができていればもっと早く物流業界でのスマートデバイス活用が進んでいたかもしれないです。

2006年、社内で企画し国際物流展において「初のウェアラブル端末を利用したコンセプトモデル」を出展しました。ウェアラブル端末を装着してピッキング作業をすれば、作業者が入力操作することなく自動的に作業実績データが作成されてコンピューターに自動的にリアルタイムで送信される仕組みを実現したものになります。

これ以降、物流展のIT系のものばかりを企画して数多く出展しました。

「スマートグラスに作業指示を表示し、ウェアラブル型RFIDリーダーを活用し、ハンズフリーで作業可能なシステム」
「可視光通信を使って自動的に位置を検出するシステム」
「AR技術を活用し自分の位置を相対的に認識し、ナビゲーションするシステム」
などを出展し、ワールドビジネスサテライトなどテレビで取り上げられることもありました。

ちなみに、まだこの頃はARという言葉はなかったです。この頃は「シンクロリアリティ」と言っていました。現実と仮想状態を同期させる、という意味合いですね。

当時のウェアラブル端末はやりたいことがあってもスペックが低くて対応できないことも多々あったため、ソリューションを無理やり2つに分けてやりたいことを実現させていました。

・ウェアラブルソリューションでは作業指示をスマートグラスを用いて目の前に表示し、素人でもすぐに作業ができる。
・カートには、位置認識システムやシンクロリアリティを活用して作業場所までナビゲーションし、さらにRFIDを活用して複数ピッキングした情報を読み取り作業が正しくされていることが分かる。
・作業が完了したら次の作業場所への指示がシンクロリアリティの画面に表示される。

本当はこれをスマートグラス1つで実現させたかったのですが当時の技術では難しかったです。

2006年国際物流総合展

2006年国際物流総合展でピッキングソリューションとして初出展(村田機械株式会社)

その後「未来はすでに来ていた!ウェアラブル業務活用事例と企業間コラボ(1)」でお話しさせていただいたように、我々のウェアラブルシステムの展示をみて興味を持っていただいた京都第二赤十字病院さんから「病院の現場で使えないか?」というお話をいただき、2013年に納入させていただきました。

売れる!これからウェアラブルデバイスは爆発する!と社内で言い切りました

大変失礼なことを言うようなのですが、調査・企画から販売・導入まで時間がかかっているように思いますが、社内から反発はなかったですか?

最初、展示会にコンセプトモデルを出すレベルで本格的な開発をしていなかった頃は、「あーなんか石田がやっとる」くらいにしか上層部も思っていませんでしたね(笑)。

本格的に製品化を目指して開発をしていこうという段階になったときに「こんなん売れるの?」と言われたときには、「売れる!これからウェアラブルやスマートグラスは爆発する!」と言い切りました。

でもそれからしばらく鳴かず飛ばずで…(笑)予算もそこそこかけていて結果がなかなか出なかったのですが、ありがたいことに会社から文句は出ませんでした。

それから8年後くらいの2012年にGoogle Glassが発表になって、ようやくうちの会社の人間も「お?これ石田がワーワー言ってたやつか?」と言い始めました(笑)
そのあとGoogleが撤退してしまったので社内で「大丈夫?」と言われ、「あれはコンシューマー向けで利用シーンがイメージしづらく、まだまだ一般的に広がっていくようなものではなくてダメだったんです。うちはBtoBで利用目的がはっきりしているので使えるんです。」と説明しました。

未来はすでに来ていた!ウェアラブル業務活用事例と企業間コラボ(3)につづく

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この記事を書いた人: 事務局

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