【プレミアム】何からはじめる?ウェブアクセシビリティ(1) FavoriteLoadingあとで読む

: 坂本 邦夫
ウェブアクセシビリティと聞くと、「障がいを持っている方や高齢者を対象にしたもの」と思われる方も多いはず。しかし、実際はもっと私たちの生活に密着した取り組みなんです。 今回はウェブ通講師の坂本氏が、ウェブアクセシビリティの基礎から取り組み方のコツまで、惜しみなく伝授。待望の連載、スタートです!

ウェブアクセシビリティとは?

最近よく聞かれるようになってきたウェブアクセシビリティという言葉、皆さんはご存じでしょうか?

日本ではウェブアクセシビリティに関する「JIS X8341-3:2016」というJIS規格があります。この規格はW3Cが定めたWCAG2.0というISO規格にもなっているガイドラインと同じもので、国際的にも通じる内容のものです。

正式には「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ」といいます。

ここには「この規格は、高齢者及び障害のある人を含む全ての利用者が、使用している端末、ウェブブラウザ、支援技術などに関係なく利用することができるように、ウェブコンテンツは確保すべきアクセシビリティの基準について規定する」と書かれています。つまりウェブアクセシビリティは「特定の誰か」が使いやすいことではなく、「すべての利用者が利用できる」ことを実現させるために必要なものなのです。

ですが、ウェブアクセシビリティの話題でよく出てくるのは、「目が見えない人が音声読み上げを使っている事例」で、どうしても「高齢者・障害者」のためのものだという印象を持っている人も多いのではないでしょうか。ですが、ウェブへの「アクセスのしやすさ」で困っているのは、高齢者や障害者だけではありません。

例えば怪我や腱鞘炎などで手が使いにくくなれば、手が不自由な人が遭遇するのと同じ問題に遭遇しますし、普段メガネをしている人が、メガネを忘れただけでも使いにくくなるはずです。ウェブアクセシビリティは他人ごとではなく、いつ自分が遭遇してもおかしくない問題なのです。

【図1】アクセシビリティは高齢者・障害者のためだけのものではありません

【図1】アクセシビリティは高齢者・障害者のためだけのものではありません

もちろん障害について配慮することは、ウェブアクセシビリティにおいては、たいへん重要なことです。しかし一口に障害と言っても視覚・聴覚・身体・発話・認知・学習・神経などに分けられますし、視覚の中でも、まったく見えない全盲の人と少ししか見えない弱視の人、特定の色の見分けが難しい色弱の人で配慮の方法は変わります。

そのような複雑な条件の全てに対応したウェブサイトを作るのは難しいのですが、そのよりどころとして、WCAG2.0やJIS X8341-3:2016などの規格を利用すれば、より多くの人が使えるウェブサイトに少しでも近づけていくことができます。それによって、ウェブ全体のアクセシビリティ環境がよくなっていくのです。

次回は、具体的にどんなサイトでウェブアクセシビリティを取り入れるかをお伝えしていきます。

坂本 邦夫
この記事を書いた人: 坂本 邦夫

カラー&Webデザイン フォルトゥナ 代表。
Web制作コンサルティングを主な業務としながら、書籍や雑誌などへの寄稿・セミナーなどで、ウェブにおける 色彩環境の向上を使命として活動。
主な著書に 『ウェブ配色 決める! チカラ – 問題を解決する色彩とコミュニケーション 』(ワークスコーポレーション)、『ウェブ配色 コーディネートカタログ 』(技術評論社)など。