これから紹介する「組織にテストの文化を作る6つのステップ」は、あなたとしては「知っていること」「普通にやっていること」をあえて言語化したものだと捉えるくらいがちょうどいいと思います。
自身が周囲に伝えるのに活用してください。そしてぜひ、前回の記事でA子さんが直面した苦い経験の先へ行きましょう。
組織にテストの文化を作る6つのステップ
組織全体で改善を繰り返し、テストを行う文化を作るために、6つのステップからなるフレームワークがあります。このステップでテストを行い、大小さまざまな意思決定にテスト結果を活用しましょう。
- じっくり見直す
- 仮説を立てる
- 沢山アイデアを出す
- 優先順位を付ける
- 速く回す流れを作る
- 小さく積み重ねる
1. じっくり見直す
テストの最初のステップは、いつも見ているアクセス解析のデータや広告のデータを「じっくり見直す」ことからはじめます。
データを見ているようで実は何も考えていない、ということはありませんか? また、データを見てもいない声の大きな人が思いついたからという理由でテストをしていませんか?
それではだめです。自らがじっくり見直すことで、普段と違った軸(ディメンション)でうまくいっているものや、逆にひどく悪いものを見つけます。1時間でも良いです。Googleアナリティクスのデータに向き合ってください。
このとき、フォームのプロセスごとに目標を設定している専用のビューがあると便利です。例えば、カスタムレポートを使ってサイト内検索キーワードごとの各目標の到達数を表示させれば、サイト内でどんな検索したユーザーがどこで離脱する傾向にあるのかがわかります。いわゆる目標到達プロセスのレポートよりも細かな粒度で確認可能です。
いずれにせよ、しっかり時間をとってデータを「じっくり見直す」ことからはじめましょう。
2. 仮説を立てる
じっくり見直して気づいた点について「なぜ?」を考え、仮説を立てるのが第2のステップです。
この広告文はなぜ飛び抜けてうまくいっているのか、このデバイスのこのランディングページのCVRはなぜひどく悪いのか、よく考えましょう。それらを見たユーザーはどんな体験をしているのか?
仮説を立てるとき、ユーザーになったつもりでサイト内を動いてみると、気づけることがあります。ただ、自分なら当然こうすると思っている行動をとらないユーザーもいることを忘れてはいけません。あなたの担当するサイトについて知識の浅い同僚に声をかけて、訪問から購入まで、一連の行動をとってもらってから意見をもらえると、仮説を立てやすくなります。
なお、テストする前に、自分としては「答えがわかってしまった」と感じるようなことでもテストする意味があります。実際にやってみると、思ったように動かないことはよくあるからです。
また、あなたには当たり前と思えることを人に伝えるとき、テスト結果があるとないとでは説得力が違います。すぐに答えとせずに「確度の高い仮説」としておくとよいでしょう。
3. 沢山アイデアを出す
立てた仮説を検証するための方法を考えるのが第3のステップです。
ちょっとしたものでかまわないのでアイデアを沢山出しましょう。
「ページ内にある説明を一部カットしてシンプルにする」「ボタンの文言の言い回しを話し言葉にする」「ビジュアルに動物のキャラクターを入れて親しみをもたせてみる」「検索ボックスにあらかじめ検索キーワードの代表例を入れておく」など、何でもよいです。一般的じゃないアイデアかも…と自分で自分にブレーキをかけてしまうのがいちばんのNGです。常識のタガを外して大胆に発想できると、アイデアは広がり、筋のよいものも生まれやすいはずです。社内に働きかけてアイデアを募集したり、意見を聞いたりするのもよいでしょう。オンラインのメールやチャット、アンケートなどを活用すれば手間なく簡単に意見を集められます。テストが浸透している組織では、こうした活動がカジュアルかつ頻繁に行われています。
4. 優先順位を付ける
沢山のアイデアを出し終えたら第4のステップ、優先順位付けへ。
一度にすべてのアイデアを試すのは無理です。シンプルでインパクトの大きいものを選んではじめるようにします。逆にいうと、複雑なもの、インパクトが小さいと考えられるものは後回しにします。
ここまで来たら、プロジェクトの主だった関係者を集めてミーティングを行います。プロジェクトの責任者はもちろん、できるかぎり経営層を巻き込んでください。以下の5つの観点から候補のテストを関係者に共有し、ディスカッションをしながら優先順位をつけます。
a.各テストの良い点、悪い点
b.テスト設計(概要、仮説、指標、変更内容など)
c.テストの潜在的なインパクトとビジネスに与える影響(与えるとしたらいつ?)
d.あるテストと別のテストとのトレードオフ
e.向こう3か月で行うテストのリスト
マーケターにはシンプルなテストのように見えるのに、エンジニアにはややこしい変更を行わなければならないものはよくあります。エンジニアのリソースが必要だがインパクトがありそうなテスト、すぐに行えるがインパクトは見込めないものなどを照らし合わせて決めていきます。
5. 速く回す流れを作る
第5のステップはテストを行う体制です。
一つのテストを永遠に続けるのはNGです。
数か月でも長すぎます。数週間で結果を出せるような十分にトラフィックの確保できる対象をあらかじめ選ぶことが重要です。
例えばオプティマイズでは最低限2週間待つことを推奨しています。その上でテストのパターンがオリジナルのパフォーマンスを95%以上の確率で上回る場合、リーダーとして提示されます。
また、ロードマップを作ることもテストを根付かせるには必須です。向こう3か月から半年、どんなテストが予定されているのか、誰が見てもわかるようスプレッドシートなどで共有しておきます。次に何をするかの見通しがあると、テストの状況などで多少の期間のずれがあっても、調整により確実に進行していくようになります。これでテストが自然消滅をすることを防げるはずです。
テストのロードマップの例
また、どんなテストを行うか、簡潔な設計シートを作っておくと、関係者が後から見返したときに行ったテスト内容をすぐ把握できます。
テストの設計シートの例
6. 小さく積み重ねる
最後のステップです。テストを行っていると、結果が疑わしかったり、よくわからなくなったりすることがあるかもしれません。そんなとき、難しく考えて袋小路に入り込んでしまうのは時間がもったいないです。
さっさと頭を切り替えて、簡単でちょっとプラスになりそうなテストを沢山行うようにしてみましょう。優先順位付けの際にビジネスインパクトを考慮するように述べましたが、必ずしもいちどに大きな変化を狙おうとしなくてもよいでしょう。
ボタンの色やサイズや文言、見出しの言葉遣い、ナビゲーションの見た目やリンクの順番まで、改善の要素はどこにでも転がっています。一つひとつは小さなプラスでも、その積み重ねが大きなインパクトにつながっていく可能性を持っています。
下記に記す改善の要素サンプルも活用しながら、地道に改善を繰り返していきましょう。
改善の要素サンプル
参考資料:
Test with success – even when you fail | Google Analytics Solutions
サンプルテスト | Optimizeヘルプ
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