【プレミアム】組織にテストの文化を作る6つのステップ(前編) FavoriteLoadingあとで読む

: 寳洋平
広告運用に違いを生むテスト文化がなぜあなたの会社には根付かないのか。テスト文化を社内に根付かせるための6つのポイントとは?広告運用者なら一度は体験するもどかしい事例をエピソードでご紹介します。

テストは自然消滅する

まず、身近なエピソードからはじめましょう。

A子さんは都内在住のリスティング広告、SNS広告のプレイヤー。
4年勤めたネット広告代理店の仕事を辞めて独立し、2年前から企業の広告運用を代行しています。仕事の速さ、丁寧さ、持ち前の真面目さも影響しているのか、仕事が絶えたことがないのだそうです。
お客さんから「しっかりWebサイトを把握していて、改善点を的確に述べてくれる」との言葉をいただくことも。重宝されているのでしょう。

プロジェクトの現場では、彼女一人が「外部」の人間であることがほとんどです。役割こそ広告運用の担当ですが、線を決めずに、同じチームの一員でいるつもりで思った意見を伝えるようにしています。

ただ最近、もどかしさを感じることが立て続けに起こりました。

いくつかの企業の現場で、テストが自然消滅してしまったのです。
無料で使えるABテストツールのオプティマイズがGoogleからローンチしてから間もなく、A子さんはいくつかのプロジェクトの現場で提案を行いました。普段から出稿先のサイトを見ているので、試してみたいアイデアがいくつもありました。

広告運用の世界では、テストをして確かめながら改善していくのはごく当たり前のことです。ABテストはもちろん、広告運用のプロセスそのものがテストの繰り返しのようなもの。
A子さんは広告運用の仕事を通じてその考え方が自然と身につきました。オプティマイズを使ってページを含めた改善ができるのは、自分の持ち札が増えたようで、ワクワクしていたほどでした。

しかしいざ進めようとしてみると、テストの実施は思ったようには進みませんでした。
ある企業でテストをはじめて間もなく、担当者の上司でプロジェクトの責任者と話す機会があり、広告のプロモーションの方針の変更を告げられました。

その変更は、テストで明らかにしようと考えていた内容とも関わっており、それならばテストの結果を見て判断するのがよいとA子さんは告げましたが、責任者はきっぱりと首を振りました。
「いろいろと考えていただいてくださっていることは助かっています。しかし今回はもう社内で決まったことですからね」と。

このように、テストはあっけなく自然消滅してしまいました。この企業だけが特別なわけでもなく、いくつかの企業で近い経験をしたA子さんは深いため息をつき、つぶやきました。

「このままじゃダメだ…」と。

学びを広めるベクトルを持つ

あなたが広告代理店の担当者やコンサルタントのように企業に対して「外部」として関わっていても、企業内のWebマーケティング担当、つまり「内部」として携わっていても、A子さんと同じようなもどかしさを感じたことがあるのではないでしょうか。

企業活動は意思決定の連続です。ABテストは一般的な言葉となりつつあり、プロジェクトの現場で行われることも増えていますが、肝心の意思決定にテスト結果が有効に使われていないという、ちぐはぐな現象が起きているのが現実です。

これは「テストを繰り返し、データを確かめながら改善していく」ことを行っているのが組織のなかの一部の人間だけにとどまっているからだと考えられます。
もっと極端に、改善は広告代理店にまかせっぱなしで、自社では考えたことすらない組織もあるかもしれません。日本には代理店にべったり依存する習慣から抜けきれない企業がまだ少なくありません。

一方、この記事を読んでいる人は運用型広告やサイト改善の現場に携わった経験があるでしょうから、テストで行った小さな変更が大きな違いを生むこともすでに学んでいるはずです。しかし、あなたには身についている考え方も、周囲の多くの人の共通認識になっているわけではないのです。

大事なのは、学びを自分だけのものにするのではなく、自社内でもクライアントでも、周囲に根付かせるベクトルを持って広めることだと筆者は考えます。

次回は、テスト文化を組織に根付かせるための6つのステップについて、詳しくお伝えしていきます。

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寳洋平
この記事を書いた人: 寳洋平

アユダンテ株式会社、SEMコンサルタント。
Googleアナリティクスを活用しリスティング広告の設計・運用、およびコンサルティングを行っている。著書に「いちばんやさしいリスティング広告の教本(インプレスジャパン)」「新版 SEM:リスティング広告(インプレスジャパン)」がある。