戦略と戦術のわかりやすい根本的な違い。 FavoriteLoadingあとで読む

: 丸山 耕二
戦略と戦術の違いって、正直ニュアンスであって、いまいち明確じゃないと感じていました。今回はその違いをしっかり考えてみて、景気が下り坂と言われている今年以降に備える方法を考えてみようと思います。

新年のあいさつ

画像:ふたごのできごと(似顔絵/イラスト/デザイン@徳島・沖縄・岡山・倉敷)より


※2021/1/20追記

この記事は2019年に書いたものですが、今でも結構人気で良く読まれています。今読み返しても、自分が思うことを割と的確に書けたと思っています。

一方、この記事から2年ほどたった今、私は「戦略」という言葉をこの2019年の記事とは違う視点でしばしば使っています。せっかく記事を読んでくださる方がいると思うので、この視点の違いについても触れておきたいと思います。

2019年の本記事のポイント

2019年に書いた本記事では、戦略と戦術の違いがともすると言葉遊びに近い状態になっている事を指摘し、そもそも究極の戦略とはどういう類のものか?について考えています。それを考えないと、多くの人の戦略眼が一致しないからです。

そして、その究極の戦略を考える時、それはどちらかというとCI(コーポレート・アイデンテティ)と行動指針の話に近くなっており、そこから様々なことを派生させることが重要で、この2つの言葉遊びに悩む必要はないのでは?という結論になっています。

つまり、この記事は「なぜ巷で流れる『戦略と戦術の違い』への納得感が薄いのか?」という点についてふれた記事になっています。

2021年現在しばしば使う「戦略」の定義

一方で、最近の私が使う「戦略」の用途は少し違っています。

具体的には戦略とは、ある目的に向けて、どういう手順とリソースで挑み、達成するかを示した計画という意味で使っています。

この目的で使う限り「戦略」という言葉はとても便利です。なぜかというと、他者と共有する時に「この戦略はどう?」と伝えれば、ほとんどの人にイメージしてもらえる言葉だからです。かつ「勝つぞ!」「やるぞ!」というニュアンスが入ってくるので、戦略がよければチームの士気もあがります。

もっとも大切なのは「攻略手順」が入ってくること。最初にこの城を攻めて、次にこの城を攻める、のような感じです。チームの目的に対して誰も疑問をもってないことが大前提ですが、その状態であれば、この戦略について議論を交わすのは、士気にも影響するしとても有意義だと思います。

なお、これはあまり深く語られない大きな秘訣だと思うのですけど。

多くの企業において、「目的はなんだっけ?」と確認している時、実は目的はずれていないけど、戦略眼がずれているために議論がまとまっていないと感じます。この場合必要なのは、目的の再確認ではなく「戦略への合意」だと思います。

さらに大きな秘訣なんですけど。

「軍師」という職業があるように、実は戦略というのは考えるのが得意な人と苦手な人がいると思います。デザインが得意な人と苦手な人がいるのと同じ。かつ、本人の経験によっても全然違うのですよね。まさに職業。

ですので「お前は戦略がなっていない!」と怒るのは間違いで、そもそも適性の話だと私は思っています。かつ経験が違えば思いつく奇襲も違いますし、そもそも大企業においては奇襲の方が勝率を下げるかも知れませんし。組織によって必要な軍師も違います。

とうことで、戦略眼を持つ人を育てたいと思うならば、まず最初に適性を把握することが最も重要で、それこそ「その人の成長戦略を育てる側が持てているのか?」も重要だと思っています。

せっかく記事を読んでくださる方がいるのに、私の現在の使途の違いに触れないのは良くないと思ったので追記しました。

↓下記からは2019年当時の内容をそのまま残しています。


 

あけましておめでとうございます。

2019年に入りましたね。

来年にオリンピックを控え、今年はどのような年になるのでしょうか。

私自身は、普段生きている中で感じたことをやるようにしているので、あえて、その年の景気を見据えてやることを変えたりはしません。松下幸之助さんの言葉にあるように「もし不況が来てもしょうがないし、人材育成のチャンス」くらいでぼんやり捉えています。

とはいえ、あまりに景気のことを無視しすぎても勝ちづらくなるので、よく当たると噂のニトリ会長の景気予測くらいは買って読んでおきたいと思います。(1月7日の週刊現代で詳しく語られるらしいので、それを買います。)

概要は出ているのでお伝えすると今年から景気は下り坂で、日経平均は2万円前後。だそうです。

ところで。

今年以降を「勝つ」ためには「戦略」が必要

先ほど何気なく使った「勝つ」という言葉。ビジネスではよく使われますが、スポーツなどと違って何に勝つのか?が曖昧だったりします。

たいていは「競合に勝つ」っていうよりも「予定通りうまくいく」ことを指すことが多い気がします。そのため、周りの戦況をうまく把握して、立ち回ることが要求されるわけです。

そして、こういった話をする時によく出る会話が「もはや戦略の変更がマスト」であったり、「それは戦略ではなく戦術だ」という言葉です。

当たり前ですが、変化の時代に勝っていくには、それこそ戦術ではなく「勝てる戦略」というのが極めて重要になります。

ところが戦略と戦術の違いって、正直ニュアンスであって、いまいち明確じゃないと感じていました。

そこで、新年一発目の今回の記事では、その違いをしっかり考えてみて、景気が下り坂と言われている今年以降に備える方法を考えてみようと思います。

戦略と戦術の違い

一般的に言われる「戦略と戦術の違い」

一般的に、戦略とは「大局をみて考えた勝つためのシナリオ」と言われています。対して戦術は「具体的な戦い方」です。

一瞬わかったような錯覚に陥りますが、例えば「リピーターを大切にしてホームページからのコンバージョンを増やす」というのは勝つためのシナリオなのか、それとも戦術なのか?というのは、極めて曖昧です。

こういった話をコンサルの人にしてしまうと「戦略がわかっていない。それは戦術だ」となりそうなのですが、まさにその通りで、そもそもこの指摘は、人の間違いを指摘するために使われていることが多いような気がします。

「それは戦略ではない」という指摘は「おまえは大局にたって物事を考えられていない」という意味だったりするのです。

じゃぁ「大局にたつ」ってどんな視点なのでしょう。

「大局」について、実は全員曖昧・・・

結論からいうと大局というのは極めて曖昧だと思います。

たとえば、豊臣秀吉は、天下統一をした意味では「大局をみて勝った」人ですが、その後の滅ぼされ方をみると、その意味での大局には立てていません。徳川家康の方が優秀だったとみる人もいるでしょう。

しかし、そもそも家康の生き方が好きじゃなく、織田信長のように生きてみたい!という人もいるでしょう。こうなってくると大局とは何かがよくわからなくなってきます。

で、実はこの話。

私が黒字経営を50年間続けてきた会社の会長とお話していて出てきたものなんです。

長年成功している経営者から学んだ、戦略と戦術の根本的な違い

発端は飲みながらその73歳の会長から聞いた「その冊子配布は、10年前からやっていたんだ。だから10年後に多くの人が賛同してくれたんだ。それが戦略だよ」という言葉でした。

私はその言葉を聞いて、はじめて具体的な戦略と戦術の違いがイメージできました。

興味をもった私は、そのあたりを深くお聞きしたく、具体的な物流の抑え方をお聞きしたり、歴史の話、それこそまさに先ほどの徳川家康がどのような仕組みを作り、その後町人文化が発展したかといった話をお聞きしました。

余談ですが、会長は同志社の商学部を出ていて、その時読んだ徳川家康(山岡荘八著)が好きだそうで。

最後は、東京は遊びでお金が回るが、地方はそのようなことがないといった話から、各地方の商売の特色といった話で盛り上がりました。

戦略とは「生き様(信念)」を決めること

その後も、やはり長年成功している経営者や、会社を上場させた経営者たちとお話して確信をもったのですが。

まとめると、戦略とは「生き様」を決めることだと私は捉えています。いや、生き様は目的と戦略を含んだ複合的な最上位概念といった方が正確かも知れません。

先ほどの織田信長や徳川家康のように、生き様というのは千差万別であり、その生き様によって戦い方というのは全く違います。東京でやるのか、大阪でやるのかも違います。ですので、戦略は必然的に生き様から生み出されない限り、本当の意味で「勝てない」のです。

スポーツの勝ち方でもそうです。「とりあえずこのメンバーで勝つのがかっこいい」と考える人と、「勝つためにはインチキでも何でもやる」と考える人とでは、必然的に戦略は変わってきます。

これは個人の戦略でもいえますし、企業においては概ね創業者の考えた企業の生き様がそれにあたります。創業者が亡くなってる場合も、経営理念という形で残っていることもありますね。

生き様を決めるコツ

厳しいのは「生き様は簡単には決められない」ということです。

私を含む多くの人は、人生で何をしたいかも曖昧だし、そもそも変化する生き物で、それこそスティーブ・ジョブズのスピーチのように「後から考えたら、人生の点が線になっている」と気づくものです。

なので、生きている現時点では「どうしようかしら」「何を優先すべきかしら」と毎回悩むわけです。

そういう時でもうまくいっている人をみると、何かしらのシンプルな信念をもっている(美を追求するとか)、過去の偉人などにロールモデルを見つけていることが多いと思います。そして少し柔軟な考え方をしている気がします。「今はこの考え」という感じです。

そのシンプルな信念を判断のよりどころとして、毎回突きつけられる課題に対して知恵を絞り、行動していく。そうすると、何かしらの道が開けていっているように思います。

つまり実際にうまくものごとを進めている人は、生き様というか、今感じている信念、行動指針を大切にしているのですよね。

【結論】戦略とは何か?

戦略を言葉通りに捉えれば「勝つためのシナリオ」です。

しかし、そのシナリオが毎年コロコロ変わるようではそれは戦術だと揶揄されることもあるでしょう。

究極のところでは、戦略とは、誰にでもわかるシンプルな言葉で「生き様」を示したものだと思います。

それ以外は戦術と考える。そうすれば、「いやそれは目的で、戦略や戦術とは、、」と悩まずに、もっとシンプルになるのではないかと思います。区分で悩むのはそもそも本分ではないってことですね。

言葉はシンプルに、そして変化してよい

コピーライターとしても有名な糸井重里さんが代表をつとめる「ほぼ日」は、先日上場しました。そのほぼ日には「企業理念」はなく「行動指針」だけがあります。「やさしく、つよく、おもしろく」です。

ほぼ日 企業概要(行動指針)

ほぼ日は1998年から運営されていますが、「すいません、ほぼ日の経営。」によると、実はこの言葉に辿りつくまで、いくつも変化しているそうです。

言葉のプロである糸井さんが、今まで的確な言葉を探して変化させてきたこと、そして最新が行動指針であることは興味深いです。

言葉は変化してよいし、また企業に必要な言葉は、突き詰めると行動指針、つまり生き様であると勇気をもらえます。

これからの時代を生き抜く戦略とは

どれだけ勝つためのシナリオを考えたところで、勝ち方には賞味期限が来ます。

特に、今から始まるAIやIoT、ブロックチェーンなど、テクノロジーにより激変するSociety5.0時代において、勝ち方は都度かわっていくでしょう。

また多様な価値観がうまれつつある時代に、売上げだけを目指す戦略もまた、多くの賛同を得られない可能性があります。経済的な勝ちは、人生の勝ちではなくなっているのです。

今の時代に求められるのは、その企業らしい行動指針、生き様なのだと思います。それに対し人が集まってきます。

そして、その行動指針に従って、今の戦況にたってなるべく高確率で生き残れそうな作戦を考える。もしくはわからないなら、とりあえず動いてみる。

そんな姿勢が、これからの時代には求められている気がします。

せっかくの新年なので、私も行動指針にしたがって今年の計画をたてようと思います。その勝ち方として「AIを味方につける」ということは考えています。

よかったら、みなさんもやってみると、何かしらの将来につながる重要な点が生み出されるかも知れません。

丸山 耕二
この記事を書いた人: 丸山 耕二

ウェブ担当者通信の発起人。
株式会社ウェブジョブズ代表。
コンサルティングの他、ウェブ担当者教育などにも力を入れ、株式会社インプレスビジネスメディア社の運営するウェブ担当者フォーラムにて「誰もが受けたい!アクセス解析5 分クリニック」を連載。
著書に無料でできる! 世界一やさしいGoogle Analytics アクセス解析入門(秀和システム)
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