Amazonに出品しているECサイトのウェブ担当者が注目すべき検索連動型広告(Amazon Marketing Services)が始まっています。
日本ではGoogle AdWordsやスポンサードサーチと比べて知名度が低いですが、最近のAmazonの動きや海外のマーケティング関連ニュースを見ていると2018年はさらに注目を浴びることになりそうです。
Amazonの検索連動型広告(厳密にはAmazon Marketing Servicesには検索連動型ではないメニューもありますが、メインは検索連動型広告なのでここでは検索連動型広告とします)はどんなものなのか、Amazon Marketing Servicesを実際に運用した感想を書いていきたいと思います。
Amazonの検索連動型広告(AMS)とは
Amazonの検索連動型広告はAMS(Amazon Marketing Services)と呼ばれています。
検索連動型広告なのでAmazonユーザーが検索したキーワードに連動して関連する商品が広告として表示されます。この検索連動型広告がAMSのメインの広告メニューになります。Google AdWordsやスポンサードサーチと仕組みが似ているのでイメージしやすい人も多いと思います。
AMSにはもう1つ広告メニューがあり、Amazonユーザーの興味・関心に連動した広告を表示するものもあります。詳しくは各広告メニューの章で説明していきます。
AMSの特徴
AMSは主に下記のような特徴があります。
- 購買意欲の高いAmazonユーザーにリーチできる
- 月間訪問者数はデスクトップ約1,636万、モバイルで約3,456万(日本における数値) ※1
- デスクトップ、モバイルの両方に広告配信
- 1日100円から広告掲載が可能
- 広告がクリックされた時だけ課金
- ランディングページはAmazon内のページ(独自ドメインへはリンクできない)
AMSの特徴を1つずつ説明していきます。
1. Amazonを訪問する購買意欲が高いユーザーへのリーチ
Amazonの検索連動型広告はすでにAmazonに訪問している時点で、何かしら購買意欲の高いユーザーが多いです。検索連動型広告を使うことで、検索結果の上位または1ページ目などに表示することができるため、購買意欲の高いユーザーにリーチしやすいです。
2. デスクトップ、モバイル、Amazonショッピングアプリに広告配信
配信デバイスはデスクトップ、モバイル両方で広告を出すことができます。Amazonショッピングアプリでも広告は表示されます。
3. 1日100円から広告掲載可能、クリック課金
広告費は1日100円から掲載が可能で、クリック課金です。Google AdWordsやスポンサードサーチとそっくりですね。
4. ランディングページはAmazon内のページ
最後に、ランディングページはAmazon内にあるページになります。独自ドメインサイトにはリンクすることができません。ここはGoogle AdWordsやスポンサードサーチとは異なる点です。
※1 m.media-amazon.com/images/G/09/AdProductsWebsite/Whats_online_ad.pdf
AMSを使う理由
それではなぜAMSを使う必要があるのでしょうか?
Amazonが発表したデータによると、AmazonユーザーがAmazonで検索結果の2ページ目以降を見る割合というのは約30%しかないそうです。約70%のユーザーは1ページ目しか見ていないのです(1ページ目で商品の目星をつけて選んでいると考えられます)。 ※2
そうなると、たとえ良い商品だとしても、1ページ目に表示されなければ約70%のユーザーには見てもらえない可能性が高いわけです。
そこでAMSを活用してはどうでしょうか?ということになります。
AMSを使うと、入札単価によっては自然検索の1位よりも上位に掲載することも可能です。この辺もGoogle AdWordsやスポンサードサーチと似ています。
※2 Adweek誌、2014年11月
AMSの広告メニュー(種類)
AMSの広告メニューは2018年1月時点で3種類あります。
- スポンサープロダクト広告
- ヘッドライン検索広告
- 商品ディスプレイ広告
スポンサープロダクト広告
スポンサープロダクト広告は、キーワードによるターゲティングの広告メニューです。広告審査が無いのが特徴で設定をしてすぐに広告掲載が可能です。スポンサープロダクト広告はオートターゲティングとマニュアルターゲティングに分かれます。
オートターゲティングは、キーワードのターゲティングを自動で行う広告メニューです。
マニュアルターゲティングは、広告主が自分でターゲティングするキーワードを考えて設定をする必要があります。
最低クリック単価は2円から入札可能です。
スポンサープロダクト広告は以下のような場所に掲載できます。
気がつきにくいかもしれませんが、「スポンサープロダクト」と書いてあるものが広告になります。※2018年1月時点の掲載場所になります。
AMSを知らない知人の数人にスポンサープロダクトが書いてあることを聞いてみましたが、これを広告だと認識している人は皆無でした。それくらい気づきにくいということなのだと思います。
デスクトップ(検索結果画面 上部)
デスクトップ(検索結果画面 下部)
デスクトップ(商品詳細ページ 下部)
モバイル(検索結果画面 中段) モバイル(商品詳細ページ 下段)
ヘッドライン検索広告
ヘッドライン検索広告は、キーワードによるターゲティングの広告メニューです。
掲載位置は検索窓のすぐ下に表示されるので、スポンサープロダクト広告、商品ディスプレイ広告と比べると3つのメニューの中で最も目立つ広告といえます。
ただ、広告枠が1つしかないため競合しやすく、売上の上がりやすいキーワードはクリック単価が高くなりがちです。
最低クリック単価は10円から入札可能です。
デスクトップ(検索結果画面 最上部)
モバイル(検索結果画面 最上段)
商品ディスプレイ広告
商品ディスプレイ広告は、商品または興味・関心によるターゲティングの広告メニューです。関連する商品詳細ページに表示されます。
スポンサープロダクト広告、ヘッドライン検索広告と比べると、3つのメニューの中では費用対効果は悪くなりがちですが、検索段階の手前の見込みユーザーにリーチできるのがメリットといえます。
最低クリック単価は2円から入札可能です。
デスクトップ(商品詳細ページ)
モバイル(商品詳細ページ内)
3つの広告メニューまとめ(2018年1月時点)
2018年1月時点の3つの広告メニューの特徴をまとめると表のようになります。
ただし、AMS自体が登場して日が浅いということもあり、アップデートの頻度は多いです。2017年も変更がいくつかありましたので、2018年中も以下の内容から変更される可能性はあります。
|
スポンサー
プロダクト広告 |
ヘッドライン
検索広告 |
商品ディスプレイ
広告 |
ターゲティング |
キーワード |
キーワード |
商品または興味・関心 |
広告掲載場所 |
検索結果画面
商品詳細ページ |
検索結果画面最上部 |
商品詳細ページ |
広告枠の数 |
複数枠 |
単独枠 |
複数枠 |
課金形式 |
クリック課金 |
クリック課金 |
クリック課金 |
最低入札金額 |
2円 |
10円 |
2円 |
キャンペーン予算 |
100円から |
100円から |
100円から |
広告文の作成 |
不要 |
必要 |
必要 |
審査 |
なし |
あり |
あり |
Google AdWordsとの比較
以上がAMSの紹介になります。
私は現状、Google AdWordsやスポンサードサーチも運用していますので、ここでAMSと比べて機能面での比較もしたいと思います。これからAMSを始めようと思う方には参考になるかもしれません。
Google AdWordsの機能と比較して何ができて、何ができないのかを把握してもらえればと思います。
機能比較
|
Google AdWords |
AMS |
キャンペーン |
○ |
○ |
広告グループ |
○ |
× |
広告 |
○ |
○ |
キーワード |
○ |
○ |
地域配信 |
○ |
× |
言語設定 |
○ |
× |
入札戦略 |
○ |
× |
1日の予算設定 |
○ |
○ |
開始日と終了日 |
○ |
○ |
広告のスケジュール |
○ |
× |
デバイス毎の入札単価調整比 |
○ |
× |
実はAMSには広告グループという概念がありません。
実際に運用していて困るのが、広告グループがないためにキャンペーン数が膨大な数になってしまうことです。
また、2018年1月時点では地域を指定しての配信はできません。
Amazonは日本全国配送が可能ですので、そういった理由で設定がない可能性もありますが、それでも都道府県毎に入札単価の強弱はつけたいというニーズはありそうです。
言語設定も現時点では設定ができません。
これはあまり必要がない機能かもしれませんが、実際にデータを見てみると外国語で検索されるキーワードも存在しているので、Amazon.co.jpドメインであっても日本人以外が使っている可能性が高いです。言語設定があっても意外と面白そうです。
入札戦略は現状のAMSには存在していません。
運用型広告も自動化が進んでいるので、そのうち搭載されそうですね。
予算設定とキャンペーンの開始日、終了日設定はGoogle AdWordsと同様の機能がAMSにも存在しています。
広告のスケジュールは現状のAMSでは存在していません。
曜日や特定の時間帯の広告を停止したり、入札単価の強弱をつけることは今のところできません。
最後にデバイス毎の入札単価調整比ですが、これも現時点でのAMSには存在していません。費用対効果を改善できそうですし、Amazonでのデバイス毎の広告の掲載状況をデータで見たいニーズがあると思うので、搭載して欲しい機能ですね。
AMSはGoogle AdWordsに比べるとまだできたばかりで、機能は豊富にはありません。しかし、2017年にもどんどん改善が加えられており、Amazonが広告事業に力を入れるというニュースも出ています。
Amazonの広告事業、いまや 1200億円 規模に拡大
digiday.jp/platforms/amazon-now-1-billion-ad-business/
Amazonの広告事業が加速、「熱視線」を向ける広告主たち
digiday.jp/platforms/advertisers-warm-amazons-increasing-ad-pitch/
そう考えると近い将来、機能の強化がされるのではないかと見ています。
2018年のAmazonの広告事業の動向にも注目です。
事例紹介
実際にAMSを運用して、Google AdWordsやスポンサードサーチと比較してどんなデータなのか、参考事例を紹介したいと思います。
パソコン・オフィス用品の事例データになります。
実数は公開できませんが、媒体同士で比較がしやすいようにCPC、CVR、ROASを公開します。
|
CPC(円) |
CVR |
ROAS |
AMS |
23 |
9.50% |
1336.64% |
Google AdWords(検索) |
139 |
6.04% |
232.73% |
スポンサードサーチ |
61 |
2.74% |
190.46% |
各媒体で様々な変数があるので単純比較はできないですが、AMSはCPC、CVR、ROASの3つの指標全てで優秀な数値が出ています。
CPCに関してAMSはまだ競合が少ないのが大きな理由だと考えられます。コンバージョン数の多い同一キーワードを比べても、AMSは競合が2社に対して、Google AdWordsやスポンサードサーチでは8社ほど競合が登場してきます。他業種の広告も出ている関係で多いということもあります。
AMSだとAmazonに商品がないと広告出稿できませんので、これだけ競合が少ないとも考えられますが、まだやっている企業が少ないこともCPCが安い原因でしょう。
CVRが高い要因についてはAmazonのユーザー特性があると考えられます。Amazonに訪問している時点で購買意欲の高いユーザーですから、CVRが高いのは当然といえるかもしれません。また、競合が少ない = 選択肢も少ないので、選ばれる確率が高いということも考えられます。
ROASが高い大きな要因はCPCが安く、CVRが高いことです。
CPCが低いので広告費もあまりかかっておらず、それでいてCVRが高いので売上も増えやすいです。そのためROASが1000%以上という結果になっています。
まとめ
AMSについて現状をお伝えしました。とにかく私からお伝えしたいことは「AMSを今やらなくていつやるの?」ということです。
現在は広告主の参入も少なく(一部の業種はすでに多く参入していたりしますが)非常に費用対効果が良い状況です。
しかし、これは長く続かないのではないかと見ています。Amazon社でもAMSセミナーを数多く開催していますし、AMSを多くの広告主に使ってもらおうと力を入れてきています。AMSをやるなら今すぐ始めることをおすすめします。
また、タイミングによってはAmazonスポンサープロダクト広告費 5,000円分無料体験のキャンペーンを実施していたりもしますので、こういったキャンペーンを活用するのも良いでしょう。
Google AdWordsも日本に入ってきた当時は、一部の広告主が費用対効果が非常に良い経験をしました。しかし、時代の流れと共に競合が増え、広告費が高騰し昔ほどの費用対効果を出すことが難しくなりました。
AMSの状況も初期のGoogle AdWordsに似ているような気がします。