この記事では、昨秋発表になったAdobe製品の最新情報についてご紹介します。普段みなさんが使っているアプリは、たとえばPhotoshopやIllustratorなど、ごく一部かもしれません(現に筆者もすべてのアプリを使っているわけではありません)。しかしながら、Adobe社に代表されるアプリベンダーの動向を追うことは、私たち制作がこれからどうクリエイティブの進化と向き合っていくのかを考える上でも意義のあることです。
Adobe最新アップデートからクリエイターの未来を占う
2017年秋のAdobeのアップデートは「全方位アップデート」をコンセプトに、Creative Cloudの主要なアプリケーションがほとんどアップデートされたことで話題となりました。その中から新登場を遂げた3つのアプリについてご紹介しましょう。
▼Adobe MAX 2017: Day 1 General Session
youtu.be/E_l1rQHHpjc
(1)生まれ変わった Adobe Lightroom CC
Lightroom(ライトルーム)という写真管理・現像アプリをご存知でしょうか?10年以上の歴史があるので、活用している方も多く、写真を扱う方に人気の高い製品なのですが、昨秋のアップデートで「Lightroom CC」が”誕生”しました。10年以上の歴史があるのに、”誕生”?と思われるかもしれません。
▼Lightroom CC
www.adobe.com/jp/products/photoshop-lightroom.html
実はこの「Lightroom CC」は従来製品のアップデートではなく、ゼロから開発された「まったく新しいLightroom」なのです。
もっとも注目すべきは、クラウドベースでの管理が可能でオンライン連携が可能である、という点です。「Lightroom CC」はPCはもちろん、手元のデバイスでも閲覧が可能です。AdobeIDでクラウド管理されている写真をさまざまなデバイスで呼び出したり、保存したりすることが可能になります。
LightroomCCの単体プランには、なんと1TBのストレージがついています。膨大になりがちな写真データの管理やバックアップにも最適ですね。
また、こうした写真の管理には話題のAdobe Senseiを活用した自動タグ付け機能が活躍します(現状はまだ日本語への対応が不十分な部分もありますが)。テーマごとにアルバムを作ることなどには非常に役立つでしょう。
このアプリからは、クリエイティブは今後デバイスの壁を越えて、シームレスになっていくという「未来」が読み取れます。誰でも・どこでも写真を撮影できるようになった今日、その写真のクリエイティブも、PCで椅子に座ってじっくり行うとは限りません。より手軽に、より早く、よりキレイに仕上げるためのテクノロジーが、この「Lightroom CC」には詰まっているのです。
従来の Lightroomは、「Lightroom Classic CC」という名称になりました。今秋以降のアップデートでは、ハイアマチュア?プロが愛用するアプリとして、より精細なチューニングがなされています。
▼Lightroom CCとLightroom Classic CCの機能比較
www.adobe.com/jp/products/photoshop-lightroom-classic/lightroom-cc-vs-lightroom-classic.html
(2)Dimension CCの登場
Dimension(ディメンション)CCというアプリが初登場しました。2016年のAdobe MAX 2016で「Project Felix」として発表されたアプリですが、「Dimension」と名称を変えての正式リリースとなりました。
Dimension CCは、平面を専門とするグラフィックデザイナーでも、3Dモデルを簡単に扱え、製品モックアップのイメージを手軽に作ることが可能なアプリです。
イチからモデリングする必要はありません。
ここでは、コスメのチューブのモデルを作ってみましょう。DimensionCCを起動した上で、素材のサービスサイトであるAdobeStockから「3D」を選び、”tube”や”Bottle”と検索すると、イメージに近いモデルがすぐに見つかります。
しかし、色などは当然違いますので、ダウンロードして、色を変更します。
DimensionCCでは、色や、光沢感(たとえば、テカリのあるツルツルな肌理なのか、マットな風合いなのか)などを簡単に変更可能です。ベースの色と形を決めたら、PhotoshopやIllustratorで作ったロゴやイメージをCreative Cloudライブラリに登録しておいて、ドラッグ&ドロップで適用します。
作った3Dデータのpsd化なども簡単に可能です。
Web担当者の皆さんの中には、こういったプロダクト系のお仕事を任されている方もいらっしゃると思います(筆者はWeb担時代そうでした…)。プロダクト系の入稿用データは、あらかじめ着色してある容器に対してロゴ部分だけを印刷するケースが多く、実際の商品イメージと入稿データの見た目がかけ離れている場合も多くあります。そのような場合にこういったアプリがあれば、実際の見た目を簡単にシミュレートできるので、上司やクライアントとのコミュニケーションが取りやすいですね。
3D系のアプリは動作が遅い部分もあり、Dimension CCも例外ではありません。そういった点に関しては今後のアップデートに期待したいところです。