ウェブ担当者通信の神戸オフィスは「KIITO神戸」にあります。
そのKIITO神戸にて6月3日から12日まで開催している「iichiko design展 2016 神戸」に行ってきました。
いいちこの大型ポスター、雑誌広告、テレビCM、季刊iichikoなど30年以上の関連デザインが展示されています。
「いいちこ」と言えば、学生時代からお世話になっている人も多いのではないでしょうか?
大分県の酒造メーカー三和酒類株式会社が発売している麦焼酎です。
いいちこでまず思い出したのは、テレビCMでの坂本冬美さんの「また君に恋してる」でした。なぜデザイン展?と思いながら何の先入観もなく「iichiko design展」に足を踏み入れました。
ポスターは、主に風景画とたった一言のコピーと、そしていいちこ。
・・・圧倒されました。
これ、広告ですか?
・・・
・・・
雑誌広告もいわゆる商品がバーンと掲載されているような広告じゃなく、ひっそりといいちこがいる、もしくは文字しかいない・・・
いいちこがデザイン展をしている理由を観て感じました。
写真とキャッチコピー、すばらしいです。惹きこまれました。
三和酒類に宣伝部はありません。いいちこの広告はすべてアートディレクター河北秀也さんにお任せしているそうです。
河北秀也さんは、東京地下鉄の路線図のデザインやいちごみるくのデザインを手がけ、東京芸術大学デザイン科教授をされており、また数多くの賞も受賞されている有名なアートディレクターです。
そんな有名な河北さんがなぜ大分県の酒造メーカーの広告を引き受けることになったのか?
三和酒類はもともと日本酒やワインを手がけていた酒造メーカーですが、36年前に焼酎いいちこを手がけました。最初は伸び悩みましたが焼酎ブームもあったことで売れ始めたそうです。そのころに河北さんに広告をお願いしたそうです。
河北さんの親族の方が三和酒類にお勤めになっていたこともあり、また河北さんにいいちこはすべてお任せする、一切口を出さない、という約束で引き受けてくれたそうです。
新商品が出たら商品広告を出す、というよくあるやり方ではなく、「点ではなく線で考える」、つまりじっくりと人の心に響くものを出し続けていいイメージを持ってもらうやり方で、依頼をしてから30年以上そのスタイルを続けています。
駅でいいちこのポスターを見かけたことはありますか?
このポスターは月に1回変わっていて、さらにクリスマスバージョンが用意されています。年13枚。これを30年間ずっと続けています。
ポスターでは思わず探してしまうくらいひっそりと「いいちこ」がいます。
きっと社内に宣伝部があれば「もっといいちこを目立たせて」という声もあったことでしょう。でもすべてを河北さんに任せて信じて、商品も広告も長く愛されるものを作っていったそうです。
昨日のことはもういいです。個人的に好きなポスターです。
以前森野コラムにあった「まず点を増やすこと。線と面にするには自分次第」。
このコラムでは、線になるためには点がたくさん必要、という内容でした。
iichiko design展を観て、なるほどそうなんだ、と思いました。
ポスターも雑誌広告もテレビCMも媒体広告もすべて一回の広告は点です。これらの点をずっと続けることで線になります。
30年前から「点ではなく線で」広告を考え、長くじっくりと愛されるいいちこのイメージを作ってきたんですね。
よく「ブランドを作ろう」とか「ブランディング大事」と言われますが、一朝一夕でできるものじゃないです。そして企業がブランドを作るのではなく、見た人がブランドのイメージを決めるんだと思います。
点ではなく線で、時間をかけてじっくりと、自分たちが考えるブランドイメージを見た人にも感じてもらうこともブランディングの方法のひとつとしてあるんだと思いました。
iichiko design展。圧倒され、ワタクシにしてはめずらしく感動したデザイン展でした。
観に行ったのは平日の午前という人が少ない時間帯だったので、スタッフの方がいろいろと話しかけてくれて説明をしてくれました。今回書いた内容で感じたこと以外はほとんどスタッフの方が説明してくださった内容です。
そこから思ったこと。
いいちこのストーリーを説明できるスタッフ、というのは本当にすばらしいなぁと思いました。いいちこもいいちこの広告も大好きなんだ、という思いが伝わりました。
とてもいい気分になったので今宵はいいちこを呑みながら、抽選でいただいたいいちこデザイン本を眺めます。
iichiko design展 2016 神戸
2016年6月3日(金)→6月12日(日) 10:00〜20:00 / 入場無料
(※6月3日は17:00まで/6月6日は休館)
KIITO デザイン・クリエイティブセンター神戸 KIITOホール
kiito.jp/