この記事では、昨秋発表になったAdobe製品の最新情報についてご紹介します。普段みなさんが使っているアプリは、たとえばPhotoshopやIllustratorなど、ごく一部かもしれません(現に筆者もすべてのアプリを使っているわけではありません)。しかしながら、Adobe社に代表されるアプリベンダーの動向を追うことは、私たち制作がこれからどうクリエイティブの進化と向き合っていくのかを考える上でも意義のあることです。
Adobe最新アップデートからクリエイターの未来を占う
前半では(1)生まれ変わった Adobe Lightroom CC、(2)Dimension CCの登場について説明いたしました。
(3)ついに正式リリース Adobe XD
Web制作者として最も大きなトピックは、ついに正式版リリースとして本格始動した「XD」の発表でした。

新しいWebサイトやアプリを制作する方には、非常に力強い味方になることでしょう。このXDをご存知のない方は、まずはこちらをご覧ください。こちらは、スマートフォンで閲覧すことを想定したダミーサイトです。
AdobeXD:プロトタイプ埋め込みデータ
クリック(タップ)すると、次のページへ遷移することがわかると思います。XDでは、「プロトタイプビュー」というモードを使って、ページやオブジェクト単位でのリンクを直感的に設定できます。

こういった動きや画面遷移については、従来はコーディングをしないと実現不可能でしたが、XDをはじめとしたプロトタイピングツールの出現により、ここ数年は特に、「使ってみながら改修していく」という、アジャイル型の開発手法に注目が集まっています。

ディレクター、デザイナー、エンジニアが協業するためには、コミュニケーションのためのツールが欠かせません。XDは積極的にアップデートされており、たとえばWeb制作におけるコミュニケーションツールのひとつとなり得る「デザインスペック」と呼ばれる機能を公開しています。
「デザインスペック」では、コード化に必要な情報(カラーやテキスト、オブジェクト同士の距離など)が集約されているURLを発行できるため、Web制作に必要な仕様を書き出すことなくエンジニアに情報を渡すことができます。
xd.adobe.com/spec/f8082b54-7ab3-489a-bba3-02a766555f79
AdobeIDをお持ちの方は、上記URLへアクセスの上、ログインしてみてください。
アプリの習得コストが非常に低いのもXDの特徴です。IllustratorやPhotoshopよりもツールが絞られており、初心者の方にも扱いやすいと感じます。PowerPointを扱えるレベルのリテラシーの方であれば、基本的なワイヤーフレーム程度ならすぐに作成できることでしょう。
URLベースだけではなく、もちろんpdfや各種画像フォーマットにも対応しているので、これまでの仕事上のコミュニケーションを損なうことなく、さらに柔軟なやり取りを模索できます。ご自分がデザインされない方であっても、外注の方へ指示を出す際などに使用してみてください。
“Adobe Sensei”はどこにいる?

2017年はAIがもてはやされた年でした。第三次AIブームと言われる背景には、データの取得が安易になったこと(ビッグデータ)が指摘されています。インターネットで繋がったCreativeCloudはまさにビッグデータを活用するにふさわしい舞台だと言えるでしょう。
そのAdobe社のAIこそ、”Adobe Sensei”なのですが、特定のアプリとしてわかりやすく私たちの目の前にあるわけではありません。
そのため、Adobe Senseiの恩恵を強く実感する機会が少ないのかもしれない、というのが筆者の実感です。
しかしながら、同時に「いつの間にか便利になっている」というアップデートが多いのも事実。先日のPhotoshopに搭載された「被写体を選択」という機能も、単純なピクセル同士の色情報の差分だけではなく、Adobe Senseiが被写体を解釈・解析した結果なのだそうです。
また、AdobeStockの類似画像を検索は、抽象的な色・形のイメージを探し出すのに絶大な効力を発揮します。

(詳しい手順などは著者が一昨年公開した記事Photoshopユーザーが使って感じたCCのお役立ち機能をご紹介!2017リリースはどう進化した?を御覧ください。)
ボイスアシストや自動運転など、AIの活用で私たちの生活は便利になりつつあります。一方で、AIが私たちの仕事を奪うのではないかという危惧があることもまた事実です。
しかしながら、Adobe社のAIに対する考え方は、”AIはクリエイターのクリエイティビティを広げていく”というもの。あくまで主役は我々クリエイターなのです。クリエイティビティに関係の無い部分、たとえば先程あげた選択範囲の作成や、画像の検索など、繰り返しのつまらない作業はAIにゆだね、人間にしかできない本来の仕事にしっかり集中すべきだと、Adobe Senseiは諭してくれているのかもしれません。