前回「Tableauを業務で使うと便利になること(2)」で、実際のTableauのViz(=Tableauでビジュアライズした画面のこと)を見ながら、動きを簡略化してお伝えしました。
限られたサンプルデータでしたが、動きのあるデータをチームや組織内で共有できることがすこしでもイメージいただけたでしょうか。
今回と次回4回目では、多種多様なデータを扱う際に必要になる、データの結合についてお話をしたいと思います。
広告運用のレポートはどういうデータから成り立っているか
第1回でも述べたように、私はふだんリスティング広告運用のプロジェクトに入っていることがほとんどなので、広告の例でお話しします。
広告運用の次のアクションを決めるレポートについて、2つのステップで考えてみます。
ステップ1. 複数にまたがる広告媒体の成果をまとめて見せる
主要な広告媒体として、例えばGoogle AdWordsとYahoo!スポンサードサーチ、YDNを行なっていたとします。
経営者・マネジメント層の視点に立ったとき、これらの広告の一つひとつだけでなく「全体として、いくら使っていくら儲かっているか」は必ず把握しておきたいことです。
この全体をまとめあげるには、各広告媒体のデータが一つひとつのパーツとして必要になります。当然ですね。
各広告媒体のデータソースはすべて異なるため、各広告媒体から取得したデータをまとめて、広告としての全体を立ち上げます。
しかし、各広告媒体から手動でレポートをダウンロードして整形していくのは骨の折れる作業でもあり、どこかで限界が来ます。
そのため多くの企業や代理店では、3rdパーティの提供するツールを使って、もしくは自身で各広告媒体のAPIを使うことにより、この作業をある程度自動化しています。
ここで上げている例は、Google AdWords・Yahoo!スポンサードサーチ・YDN、3つの広告媒体ですが、広告媒体が増えればその分データソースが増えていきます。
また、データソースごとにディメンションや指標の名称や定義が異なっている場合、同じ尺度で活用できるように整形する必要があります。
いずれにせよ、「複数にまたがる広告媒体の成果をまとめて見られるようにすること」が広告運用の次のアクションを決めるレポートでまず行うステップ1です。
Tableauを使って複数の広告媒体のデータをまとめあげるのはもちろん可能です。
ステップ2. 広告の価値をはかるために、広告媒体以外のデータを加える
ステップ1.で可能になるのは、あくまでも各広告媒体から取得できるデータです。しかし、それらのデータだけでは、経営者・マネジメント層が意思決定を行うには充分ではないことがあります。
実際の例を挙げます。
たとえば、設定しているコンバージョンが「リードの獲得」であるようなサイトを思い浮かべてください。
B to Bでは多いですし、B to Cでもありますね。
このようなサイトは多くの場合、問い合わせフォームに入力して送信後の「完了ページへの到達」がコンバージョンとして計測されています。
「お問い合わせの完了ページへの到達」をコンバージョンとしているサイトにおいて、「コンバージョンが獲得できているキーワードで、どのキーワードが成約につながり、収益性が高いのかを知りたい」というニーズがあるとしましょう。
これがEコマースサイトであれば、購入完了ページの時点でいくら売れたか、収益を取得できるようにしておけば、各媒体のデータとして広告経由の収益を出し、収益からROAS(Return On Advertising Spend)を出せます。
でも当然のことながら、リード獲得の時点では、そのリードが後に成約につながったか、いくら売れたかなどはわかりません。
その理由は、問い合わせを受けた段階ではまだ1円も売れたわけではないからで、問い合わせ後の営業活動などのプロセスを通じて、成約に結びついたとき初めて収益が生まれているからです。
1成約あたりの平均的な収益と成約率を掛け算すれば大まかな目安を出せますし、広告を始める際にはそれでかまわないかもしれません。
でも信頼できる実データが確認できるならば、確認したうえで意思決定を行いたいと考えるのはしごく当然のことでしょう。
この場合、データを取得できるようにするための工夫が必要になります。
たとえば、リード獲得のタイミングで、入力フォームに記入される情報とともに、ユーザーがコンバージョンしたキーワードについての情報も取得しておくようにし、顧客管理データの列に「キーワード」情報を取り込めるようにします。
そして集計の際、「広告のデータ」と「顧客管理のデータ」を、キーワード情報をキーにしてつなぎ、成果を確認します。
これにより「キーワードAは5,000円の費用で50,000円の収益を、キーワードBは10,000円の費用で100,000円の収益を生み出した」という数字がわかるようになり、ROASを出すことができます。
つまり、異なるデータを共通のキー(この場合はキーワード)でつなげて、意思決定を行う上で必要なデータをつくります。これがステップ2です。
共通のキーが存在しているデータであれば、Tableauによって簡単にまとめて、柔軟にビジュアライズすることができます。
(1)で触れましたが、Tableauは、現場の担当者と経営者のすれ違いを埋めてくれる可能性を持っています。
すれ違いを埋める重要なポイントは「つながり」です。
たとえば上記の例であれば、現場の広告運用担当者が「個別」の詳細な広告成果の報告をしていても、ビジネス「全体」として見たときに広告による効果がどうなのか、が経営者には分かりません。
しかし、「広告のデータ」と「顧客管理のデータ」をあるキーでつないで「全体」として見せることで分かりやすく伝えることができるのです。
現場の担当者が「個別」の詳細な報告をしている際にも、経営者が文脈を見失わなくてすみます。必要に応じて、細かく分解したりまとめたりを行えばいいのです。
すこし角度のちがう他の例を挙げます。
広告の成果を評価する際、一般的には以下のように行われます。
- 前月や前年同月比などの過去データや、立てている目標と照らし合わせる。
- その上で、広告データの値を分解してよしあしを見ていき、わるいところに改善の手を打つアクション、また、よいところをさらに伸ばすアクションを考えます。
それらはもちろん有効でしょう。しかし同時に、俯瞰して他の集客チャネルでの動きを含めて照らし合わせる視点を持つと役立つことが多くあります。
例えば、下記のような視点です。
GoogleアナリティクスやSearch Consoleのデータを使って、単一の集客チャネルだけでなく他の集客チャネルを含めて俯瞰して見ています。
- 「リターゲティングのコストが急激に増えたもののCVRが大幅に下がった」のとちょうど同じ時期に「懸賞サイトによる一時的な流入増がある」。
- 長期的に見て「特定の階層のオーガニック経由の流入が減少している」一方で「ショッピング広告の流入が増えており、成果も伸ばせている」。
- 「ブランドキーワードの検索回数が増え、オーガニック流入が増えている」時期は「特定の広告媒体のディスプレイのインプレッションが一定量かつ適切に投下されている」。
先の例と同様、共通のキー(ここではおもに日付情報)でつなげられれば、Tableauによって簡単にまとめることが可能です。
広告媒体のデータだけでは見えなかった状況把握ができ、より価値の高いアクションにつなげることができる可能性があります。
経営者・マネジメント層にとって、広告媒体だけのデータによる実行施策案より、こうした俯瞰した視点に基づく実行施策案の説得力のほうが高くなる場合があるはずです。
Tableauを業務で使うと便利になること(4)につづく
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