右から、村田機械 L&A事業部 企画室 部長 石田正人さま、課長 小山延明さま、主任 小林健一さま
ふたたび脚光をあびるSCM。ECや小売は「物流に勝機あり」
目次
SCM最適化は中小企業のECサイトや製造小売業も考えておいたほうがいい
すべての企業に関係があるかというとそうではありません。ECサイト運営をされている企業や流通、製造などの企業には関係がありますので知っておいたほうがいいと思います。
SCMとはサプライチェーンマネジメントのことで、原材料の供給から消費者に届くまでのプロセス全体を最適化しマネジメントをする考え方を言いますが、以前は大手企業だけが取り組む課題として考えられていました。
最近では、デジタルデータの技術進歩により需要予測や仕入れ計画、生産計画などをタイムリーに考えられるようになってきています。そのため、中小企業も他企業と共にこれまで後回しにしてきたSCM最適化をめざしていこうと考える動きが出てきています。
IoTとかAIとか言葉を聞かない日がないですよね。我々は「SCMイノベーション」と掲げていて、市場を予測して将来を見据えたサプライチェーンの最適なロジスティックスとはどんなものか、を整理してマッピングしています。その中でも、IoTとかインダストリー4.0は台頭してきています。
(※インダストリー4.0:ドイツが提唱している製造業の第4次産業革命。一方でアメリカでは同じようにIndustrial Internet Consortium(インダストリアル・インターネット・コンソーシアム)という団体を起ち上げています。あるいはIIoT(Industrial Internet of Things)とも言われている)
流通の世界ではオムニチャネルとかO2Oマーケティングが言われています。
Web操作履歴をどう活かすかとか、どういうデータがあってそのデータをどう分析してどう活用していけばいいのか、などマーケティング活用だけでなく需要予測も含めたビッグデータ分析もしていかないといけない。またSNSのデータから市場動向を探ることも必要ですよね。
このあたりの話はおそらくウェブ担当をされていらっしゃるみなさんが詳しいと思います。
ウェブだけを見ている方は販促のほうのマーケティングだけを考えているかもしれないのですが、実はそこで考えていることは製造のほうへフィードバックして融合して考えることで、市場予測や購買予測、製造、流通に至るまで活かせられるんです。
いわゆるサプライチェーン最適化ですよね。
一般的によく言われるCPS(サイバーフィジカルシステム)。CPSは、IT(サイバー空間)と実世界(物理世界)の融合のことを言います。
IoTやその他現実の世界から得られるデータをIT技術により分析・知識化して情報・価値にしていく。
次に同じ事象が発生したときに知識化された情報をビジネスに活かしていく、サプライチェーンを最適化していく。
仮想の世界と現実の世界を融合させて考えていくことが重要になってきています。
ECサイトはこれからもどんどん台頭してきますのでこのあたりのキーワードは外してはダメだと思います。SPA(製造小売業)も同様ですね。
競合サイトよりも価格が安くて、マーケティング戦略がうまくいってサイトにたくさんのお客さんを集めることができているのになぜか売上につながらない。競合は在庫が揃っていて納期が早い。少々高くても同じような商品であれば競合サイトから購入することもありえますよね。
ユーザーからのニーズもどんどん厳しくなってきていて、メーカーから小売までを含めたサプライチェーンの最適化をしないと対応しきれなくなってきていますね。
ECサイトに限らず実店舗も今の時代は大変です。実店舗はECサイトにやられてしまっていますし、流通ではオムニチャネルにどこも取り組んでいこうとしていますが、在庫管理をしっかりしておかないと実現できないことなんです。
どういうことかというと、これまでは実店舗の在庫は「なくなりそうだから発注する」というアバウトな発注・在庫管理でよかったのですが、オムニチャネル化をすると実店舗の在庫でもECサイトのほうにまわすようになってきます。
そうすると実店舗の在庫をリアルタイムデータとして把握をしておかないと対応できなくなります。
オムニチャネルに取り組むということはこの部分をきちんと見直しておかないと業務として回らない、売上につながらない、ということになりかねないんです。
ECも小売も「勝機は物流にあり」
確かにECサイトをされている方にお聞きすると仕入れをするメーカー側の在庫管理がずさんで困っている、とか商品のデータ管理が大変だ、という話は聞きますね。
マテハン機器が入るような大規模物流倉庫をもつ大手企業では、WMSシステムは当たり前のように入っていますが、在庫を持つ中小企業やECサイト運営をしている企業などは、在庫や入出荷の管理をExcelや簡易なパッケージソフトで行っているところも多くあります。
(※WMS:Warehouse Management Systemの略。倉庫管理システム。「入荷管理」「在庫管理」「出荷管理」「棚卸管理」「帳票・ラベル発行」など)
ECの売上は右肩上がりで伸びていますのでEC運営会社はかなり大変な仕事になっています。
本格的なWMSシステムを導入しようと考えると800万円くらいかかってしまいますので、村田機械では、WMSシステムとして導入をするのではなくクラウドサービスとしてWMSを提供しています。
物流倉庫管理システムXwms
使う機能によって価格帯は異なるのですが、初期費用は別で月額10万円代くらいから100万円くらいの間で本格的なWMSをご提供させていただいています。
物流IoTへの展望(村田機械株式会社)
また、ECサイト系の物流を専門でアウトソーシングを受けるサードパーティーロジスティクス(third-party logistics、3PL)と呼ばれるものがあります。
(※サードパーティーロジスティクス(third-party logistics、3PL):荷主企業に代わって、最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行い、かつ、それを包括的に受託し、実行することをいいます。荷主でもない、単なる運送事業者でもない、第三者として、アウトソーシング化の流れの中で物流部門を代行し、高度の物流サービスを提供しております。
引用:国土交通省サイトより
このような3PLの企業さんはうちのWMSシステムのお客さまだったり、提案させていただいたりしています。
ECサイトは最初お客さんを掴むこと、リピーターになってもらうこと、とにかくまずは売ることに注力してしまいますので物流は後回しになってしまうんですよね。
でも一番どこが問題になってくるかというと後回しにしてしまった物流のところなんです。
なぜかというと、品揃えを考えたときにECサイトで流れるものはどこも似たり寄ったりになってきます。そうすると価格勝負になるか、ニッチな商品を揃えるか、在庫をショートせずにいかに早く届けられるか、という違いになってきます。
だからAmazonにしても物流にかなり力を入れているんです。
アスクルさんや楽天さんは自分たちの勝機は「物流にあり」と考えています。
Amazonで最近話題になったことを思い返すと、Amazonプライムナウ最短1時間で商品が届く、ドローンで商品が届く、Amazon Dash Buttonでお気に入り商品をすぐ注文、など物流に関連していることが多いですよね。それだけ物流に力を入れているということなんです。
スタートアップ企業や中小企業で物流がネックになって大切な勝機を逃してしまうくらいであれば、3PLに頼むかWMSを考えるなど早めに物流部分は予算をとって押さえておいたほうがいいと思います。
物流のことであれば村田機械におまかせください。いつでも相談にのりますよ(笑)。
インタビューを終えて
村田機械・石田さま、小山さま、小林さま、長時間にわたってお話を聞かせていただき、またデモで未来を見せていただき誠にありがとうございました。
スマートグラスを業務利用する、というのはニュースなどで読むことはあっても実際にどのように使われるのか、まだ少し先の話だと思っていました。業務利用に至るまでのさまざまな裏話なども楽しく聞かせていただきました。
- コンシューマー向けスマートグラスではVRなど限られた用途でしかしばらく出てこない
- BtoBでのウェアラブルデバイス活用の成長分野は製造、物流、医療、リモートメンテナンス。
- 新規ビジネスはアイデアの思いつきから実現までには数多くの実証実験や調査が必要。消費者のニーズの多様性やIT技術の進歩にスピードも求められるため企業間コラボはメリットが大きい。
- 自社の得意分野で顧客に新しい価値を提供する。
- SCMがふたたび脚光をあびている。ECや小売は「物流に勝機あり」
個人的におもしろく勉強になったのはこの5つ。
ウェブ業界にいるとその他の業界の本当の話を聞く機会が少ないため、今回は物流業界で最先端をいく村田機械さんにお話を聞くことができとても興味深かったです。