【プレミアム】ウェブサイト制作時の写真や動画撮影で忘れてはいけない肖像権(前編) FavoriteLoadingあとで読む

: 鍋坂 樹伸
ウェブサイト制作時の写真撮影や動画撮影で気をつけたい、被写体や写り込んでしまった人などに対する権利「肖像権」を解説します。前編では、肖像権の種類や肖像権を侵害しないために注意したいことなどを取り上げています。

コーポレートサイトやブログ・SNSや動画配信サービスを通じ、日々多くの写真が公開されています。
特にSNSではスマートフォンのカメラ機能の性能が良くなり、集合写真では公開時のタグ付け機能などにより、誰がどこで何をしていたかはっきりとわかるようになりました。
ウェブ制作者は理解していても、SNSやブログを運用しているサイトオーナーやスタッフの中には、肖像権の知識がなく公開している人も多いかと思います。

そこで今回は、ウェブサイト制作時の写真撮影や動画撮影で気をつけたい、被写体や写り込んでしまった人などに対する権利「肖像権」を解説します。

撮影と公開で注意したい肖像権とは

インターネット上で自分が写っている写真を勝手に公開された場合、肖像権侵害が問題になります。

肖像権とは、自分の肖像(人の容姿)を他人にみだりに使用されない権利を言います。
著作権などと異なり、法律上の明文化はされておらず、判例によって確立された権利が肖像権です。
法律では規定がありませんが、日本国憲法第13条の『幸福追求に対する国民の権利(幸福追求権)』のもと保護された権利です。

正当な理由なく自分の顔や姿形を写真や動画に撮られたり、勝手に公表されたりしない権利です。
肖像の持ち主である個人は、写真や映像の公開を禁じることができます。

大きく2種類に分かれる肖像権

人格権ベースの肖像権

人格権とは、個人の人格的利益を保護するために作られた権利のことです。
芸能人やアーティスト、スポーツ選手などにかかわらず、断りもなく写真を撮られたり、写真を勝手に公開されたりすると人は嫌悪感を覚える場合があります。
また、自分が隠しておきたいプライバシーが他人によって勝手にさらされてしまうことにもなりかねません。
写真や動画などで肖像を公開されることにより、個人のプライバシーが侵害される恐れがある場合に、人格権ベースの肖像権は施行されます。

財産権ベースの肖像権

財産権とは、経済的な利益を対象とした権利のことです。
たとえばタレントやアイドル、スポーツ選手は存在だけでお金を稼ぐことができます。
名前とともに外見が知られている有名な個人は、肖像を広告に組み合わせることで、広告が持つ顧客への求心力を高められます。
これらの価値を保護するのが「財産権ベースの肖像権」です。
正式には企業のPR活動の一つである「パブリシティ権」とも言います。

肖像権を侵害しないために注意したいこと

被写体への同意をとる

撮影前に口頭もしくは書面で同意をもらっている場合は、肖像権の侵害には至らないでしょう。
加えて使用用途(コーポレートサイト・ブログ・SNS・紙媒体など)や掲載期間などをはっきりさせ、同意を取った媒体以外の無許可での使用は避けましょう。
タレントなどの有名人の場合は財産権ベースの肖像権に関わります。
たとえ公開はしなくとも「よろしいですか?」と撮影許可を問うのがマナーです。

不特定多数の場合は

「旅先で撮影した写真をブログで使いたい」など、撮影した写真や映像にたくさんの人が写っている場合、すべての人に撮影許可を取るのは難しいでしょう。
公開前にレタッチをして顔をぼかすなど、個人が特定できなければ肖像権の侵害にはなりません。
被写体の肖像を守るという意識が大切です。

公の場所での撮影

イベントや祭りなどの記録撮影の場合、肖像権の侵害になることは少ないです。
撮影が予測される場所にみずから出向いている場合、撮影や公開に同意しているものとして判断されます。
イベントの主催の立場なら、事前に断りをする、撮影することを張り紙やチラシで示すなどの配慮があると好ましいでしょう。


後半では、鍋坂が実際に撮影するときに注意していることや、著作権への配慮についてお伝えします。

鍋坂 樹伸
この記事を書いた人: 鍋坂 樹伸

コマーシャルフォト サン・スタジオ
広告写真家として活動。企業の広告活動のディレクションを行うなど、写真を軸としたコミュニケーション戦略の企画立案も行っている。
著書に『Web制作と運営のための写真撮影&ディレクション教本~段取りから準備、撮影テクニック、実践ポイントまで~』(マイナビ)。