【プレミアム】海外と日本のWeb事情(1) FavoriteLoadingあとで読む

: 高田 信宏
日本とカナダを行き来されている「バンクーバーのうぇぶ屋さん」セナさんに、「海外と日本のWeb事情」 について、インタビューさせていただきました。1回目は「日本と海外でのWeb制作会社の捉え方」について。

カナダのバンクーバーに、日本で人一倍、名の知れ渡ったWebデザイナーがいます。その人の名は、「セナ」さん。Web業界で古くから存在感を示されていた「バンクーバーのうぇぶ屋」というサイトを運営している方です。現在、デザイナーやエンジニア、映像分野の留学をバンクーバーからトータルサポートする「Frog」という法人を立ち上げ、日本とカナダを行き来されています。貴重なお時間をいただき、「海外と日本のWeb事情」 について、インタビューさせていただきました。(以下敬称略)

【セナ プロフィール】バンクーバーのうぇぶ屋の中の人。カナダのバンクーバーに渡り10年目。日本で最も多くのクリエイティブ/IT系海外就職者をサポートしている『Frog』の代表。
◆Twitter twitter.com/onepercentdsgn
日々のWeb制作情報は@WebyaInVanから。
日系クリエイターの海外活動サポート企業Frogの情報発信は@frogagentから。
バンクーバーのうぇぶ屋
クリエイター留学サポート『Frog』

目次

日本と北米圏における『Web制作会社』の認識の違い

高田: お久しぶりです!本日はどうぞよろしくお願いします。Web業界に関する海外のトレンドや情報の取得方法を、セナさんならではの観点で伺えればと思います。

セナ:そうですね〜!よろしくお願い致します!

高田: では早速、「日本と海外でのWeb制作会社の捉え方」について、伺います。 セナさんは、カナダ・バンクーバーで日々行っているWeb制作や多人種国家な環境を生かした情報収集をもとに、「バンクーバーのうぇぶ屋」というブログを発信されています。 日本のWeb制作会社のようなことをされているのかと思いきや、デザインやコーディングだけでなく、プログラミングや教育、カナダへの就職斡旋事業の事業構想まで、当時から幅広く関わられていますよね。制作会社の海外の立ち位置について、聞かせてください。

セナ: まず、そうですね…僕は、「海外には、Web制作会社という概念がない」と思っています。きっかけは、ビートラックスさんというシリコンバレーにある制作エージェンシーの方が書いたブログですね。
ここの会社にいるBrandon K. Hillさんが、おそらく一番最初に、「日本でいう制作会社の枠は、北米圏にはないよ」という話を言い出した人かと思います。

ビートラックス

そのときの記事を見るまで、僕のイメージでは、『デザインエージェンシー』と呼ばれるデザインをメインにした制作を提供する人達のことを、日本でいうところの『Web制作会社』と捉えていました。

でも、日本の制作会社のように、制作だけを請け負うとかって会社が海外にはないですね。大きい会社さんであれば『Web担当部署』が必ずあって、そこが担います。もし、海外で制作会社を名乗るとすれば、デザイン全般でクオリティーを高度に維持して提供できる会社か、Webも含めたうえでのマーケティング戦略が立てられる、いわゆるマーケティング会社が、それにあたるでしょうね。Webだけではなく、包括的に見ることのできる会社です。

バンクーバーだけでいうと、「デザインの制作会社」なら、まだWebに比べたら、いくつかあるかと思います。たとえば、ディーラー専用の制作会社だったりとか、法律関連だけだったりとか。業態に特化された会社のイメージになります。だいたい業界に合わせて、自社でCMSを持っているんですよ。Webはツールであるだけです。

ただそれでもやはり数は相当少ないです。日本で言う純粋な制作会社というのはないに等しい、という感じです。

高田: なるほど。日本と北米圏とでは、かなり制作会社自体の在り方が違うのですね。

日本では考えられないような圧倒的スピード感

高田: 北米の印象ですが、日本の技術よりも3年くらい先にあちらで流行って、それが日本にも流れてくる、というイメージを持っています。バンクーバーで今流行っているものがあれば、今後の日本でどんな流行り方をするのか、予測できることもあると思います。これから流行るであろうものとか、逆に廃れちゃったものとか、北米のWeb事情を伺いたいです。

セナ: 僕の勝手な感覚値も含んでしまうと思うので、「これが正しい」とは言いたくないですが、おそらく日本が3年遅れて北米が3年進んでいるというのは、正直、技術的な部分じゃないと思っています。

技術力だったら、数の差はあれど、日本人のエンジニアにもとてつもなく高い方が数多くいます。 最近のスタートアップさんは、というと、技術力では全く見劣りしない会社も多いので、僕はそこにあまり差を感じてはいません。Webに限定して言えば、です。

最前線の話で、例えば「人工知能」とか「ディープラーニング」とかの分野だとちょっと話は別ですけどね。トロントとかに比べると、やっぱり日本の人工知能に関する技術は3歩〜4歩遅れているのは否めない、という話は良く耳にします。

それと、圧倒的に遅れていることもあります。『意思決定』の部分ですね。
北米圏…バンクーバーもそうですが、やはり意思決定するまでに「階層が少ない」ことで、決定権をもつ人にまで届くスピードが早いです。日本では あまり考えられないかもしれません。

例えば、データベース周りとかバックエンドの部分に関しては、BaaS(バース)のシステムを使えば、ネット上でやり取りが完結できたりするので 僕もよく使っています。
その間フロントに集中してサービス開発だけパパッとやって、とりあえず形にしてしまう所もあります。
それをベースにして資金調達を行い、「それじゃあ、次のステップへいこう!」となることが、サービス開発面だったら多いですしね。もちろんバックエンドの需要も非常に高いのですが「とりあえず今あるリソースで形にしちまえ!」というイメージで動く会社もあるということです。

逆に、日本の場合は、最初から完璧に作ろうとする主義が結構多い気がします。やはり、自社で開発した物以外は躊躇してしまって、第三者が提供したものをパパッと容易に使えない。総じて、スピードが遅いイメージです。

高田:確かに、そういう考え方は少ないですね。

セナ: サービス開発する時に関しても、まずは形にしてしまってからという話、ガンガン聞きますよ。すでにあるものは全部有効活用するっていう意思決定の速さは、北米圏の方が断然早いですね。

高田: 必要となるものが ほとんど揃っているのに、日本では選ばずにいるという。

セナ: そうですね、間違いなく。だからぶっちゃけてしまえば、最近はバックエンドは、必要ないんじゃないか、という人も、たまにいるんですよ。

バックエンドの部分って、BaaSで結局なんとかなってしまうし、サーバー構築さえきちんと行える人がいれば、データベースをオンにして後から結合すれば良いんです。最初のタイミングはバックエンドなしで、もうフロントエンドだけで完結させてしまえ!という動きもあるくらい。

やはり、技術者一人が賄えるスピードも、作れる範囲も、その採用する技術やサービスを選ぶ意思決定も、スピードの差をすごく感じますよね。

高田: もうバンクーバーでは、プロジェクトを進める際に、様々な使えるツールを使って、サービスを一人でローンチまでもっていってしまう、という形ですね。

セナ: 一人では、まだあまり聞いたことはないですが、少人数のチームですよね。3人~4人とかのチームで、一発でローンチまでもっていって、というケースは、結構あります。まぁ、どこを指して「Webの話」とするのか、にもよりますが。サービス開発の話であれば、間違いなくそうでしょうね。

例えば先程のデザインエージェンシーとかですと、受託で案件を取ってきて、例えば更新が必要なWebサイトで、「ショッピングカートをつけたい」となったら、とりあえずWordPressを入れて、Shopify(ショッピファイ)というショッピングカートシステムをパーっと入れてしまい、さくっとローンチまでもっていく。そんな提案のスピード感ですよね。

それがまぁ、僕が知っている頃の10年くらい前の業界事情であっているかわかりませんが、日本で同様のことをやろうとすると、ショッピングカート一つでも、最初から規模の大きいショッピングカートシステムを導入して、特に先の見通しを立てずに大規模な物にする、などという、結構回りくどい話になりやすいですよね。

高田: 確かに、日本では「信頼のおけるシステムを選ぶべき」という節があります。

セナ:  これが良いのか悪いのかではないですし、どちらが絶対悪、というのはないと思います。ただ、結局の所それら開発に挑む姿勢や意思決定、リソース選択も含めて全てのスピードが日本と大きく事なる場合が多く、またそれらの意思決定が早いということは、それだけ時間的な工数も少なくて済む場合もあります。日本では費用対効果が叫ばれますが、その割にエンジニアサイドでは「こうしたらもっと早いのに…」という不平不満の声も多いようにも見受けられます。そういう意味ではもっと意思決定の裁量をエンジニア側に持たせられるようになる方が、よっぽど不必要な部分は削減できると感じますね。

【あとがき】

最初から、非常に刺激的な話をしてくださっているセナさん。「日本のスピード感の遅さは、意思決定にある」というご指摘は、はっとしてしまいました。

また、ツールの選び方も、日本と北米圏では大きく違うようですね。「信頼」のあるローカライズされたものを選ぶより、普及された価値を優先する、という考え方、大変参考になります。

日本でもWordPressは主流のツールの一つですが、海外製のツールを扱ううえで、「セキュリティ」は万全なのか気になってしまいますよね。次回は、その辺りに突っ込んでみました。

さらに、よく議論の場となる役職「プロジェクトマネージャ」と「Webディレクター」 も、日本とどのように職務領域が違うのか伺いました。お楽しみに!

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高田 信宏
この記事を書いた人: 高田 信宏

NPO法人クリエイター育成協会 理事/東京マネージャー
ワットエバーロング株式会社 代表取締役
デジタルハリウッドSTUDIO渋谷 Webディレクション講座 講師
Webマーケティング企業に入社しSEOディレクターとして活動後、IT教育企業に転身。Webマスター兼講師として、各種サイトの運営管理を行う傍ら、講義やセミナーを通して、デザインとマーケティングの両極からの視点を伝える教育に励む。
著書:『デザイナーのためのプロの制作術が身につく Webディレクションの教科書』(共著、SBクリエイティブ社)


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