【プレミアム】『サイボウズ式』編集長 藤村さんの社内を巻き込むコミュニケーション仕事術 第1話 FavoriteLoadingあとで読む

: 事務局
サイボウズのブランドを形作る『サイボウズ式』。このメディアの編集長として社内外のコミュニケーションを図られている藤村さんの仕事観と想いをインタビューしました。連載1回目は『自由なアイデアを出し合うために「ファシリテーター」の役割を明確化する』についてです。

第1話

サイボウズ株式会社 コーポレートブランディング部
サイボウズ式編集長 藤村能光さんのプロフィール

藤村 能光さん

Webメディアの編集記者としてキャリアをスタート。
その後、サイボウズ株式会社で無料グループウェア「サイボウズLive」のマーケティングを担当。
自社メディア「サイボウズ式」の立ち上げに参画し、2015年1月より編集長を務める。

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「 新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイト | サイボウズ式

丸山:今日のお話は、ウェブメディア運営企画3部作のインタビュー第2弾となります。
1人目は、ココマガを運営されている篠原さんに、ウェブメディアを立ち上げて成長させていく過程のなかでのお話をしていただきました。

今回は、サイボウズの藤村さんから、ライティングをもう一歩深掘りした、企業としての「ブランディング」に還元するためにはどうすれば良いのか、かつ、企業内でそのコンテンツをどう活用していくのか、というレイヤーのお話をいただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。

藤村:こちらこそ、よろしくお願いいたします。

◆1-1 編集長としての仕事とは – 企業と個人を繋ぐコミュニケーションの育成

丸山:まず、藤村さんは『編集長』という肩書きの役割をされていますが、編集長としての仕事の内容について伺いたいのですが。

藤村:はい、メディアの編集長としてやるべき仕事を全てやっています。「kintone (キントーン)」という情報共有のサービスを用いて、企画作成やチームのコミュニケーションを実施しています。具体的には、企画を作るために編集部のみんなとディスカッションをしたり、アイデアを出し合ったりとしています。

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画像:kintone:https://kintone.cybozu.com/jp/

ここでは、企画をかっちりと作るというよりは、アイデアベースでどんどん気になった情報を皆で投げ合う場所にしています。

先週、社内で「嫌われる勇気」の岸見一郎先生をお招きして、弊社代表取締役社長の青野慶久とイベント対談を実施しました。これから記事化する予定ですが、その対談をするきっかけも、こちらでアイデアのやり取りをすることから始めたんです。

⇒ ※2017.03.31更新:こちらの対談記事が公開されましたので、追記しました

kintone

画像:離職率28%を経て気づいた「社員が会社を辞めるのは、自分の理想を実現したいから」
──「嫌われる勇気」岸見一郎×サイボウズ 青野慶久

◎あのベストセラー「嫌われる勇気」は面白かったので、ぜひ読んだほうがいい!
◎あの本良いよね、僕も読んだ!
◎これを社内で共有したいよね、せっかくならお呼び立てできないかな。
◎そういえば、著者の岸見さんと繋がりがある役員がいるよ!

というふうに、議論や雑談をどんどんタイムライン上で繰り返して、やり取りを重ねていきます。ここにはいわゆる会社の上下関係などは一切なくて、自由に書き込みをしながら、アイデアを進行形で形にしていっています。

丸山:企画会議をやっているというよりは、1つのスレッドがあって、みんなが思いついた事を書き込んでいくスタイルなんですね。

藤村:おっしゃる通りです。企画を作る為の最初のアイデア出しの場所になっていて、ここから企画にしていくという流れになります。その後は、編集会議で具体的に揉んでいくことになるので、その会議運営も私がやっています。

丸山:編集会議は、どれくらいの頻度で実施されていますか?

藤村:週に1回ですね。先程のオンラインでアイデアやブレストをして出し合ったものを、編集会議を通して、さらに企画化に向けてディスカッションしていきます。私が毎週アジェンダを組み、その流れで編集会議をしています。

編集会議

丸山:1回の会議は何時間ぐらいなのでしょうか?

藤村:編集会議は社内メンバーのみの場合は、1時間程度です。たまに、社外の方をお呼びすることもあるのですが、その場合でも1時間半ぐらいですね。出し合ったアイデアをさらに交配させて、より企画の密度を高めていきます。

会議が終わると、企画になるものをkintoneのアプリ上に企画として登録し、タスク化して管理していきます。

kintone

kintoneでサイボウズ式 記事管理アプリを作り、企画のタイトルや公開予定日、担当者を設定。

丸山:編集会議1時間のなかで、これだけのアイデアが出ていると、まず最初に藤村さん側でテーマをかなり絞られているんですか?

藤村:そうですね。私の編集会議での役割は「ファシリテーター」だと思っています。一週間以内、もしくはそれ以外に出てきたネタに対して優先順位をつけ、これは編集会議でとりあげた方がいいんじゃないかというのを議論していく流れにしています。

そのため、全てのアイデアを取り上げる訳ではなくて、あくまでも「サイボウズ式」としてこれからやっていくべき内容はどれだろう?というのをこちらで精査します。そこからピックアップして、編集会議で話していくことにしています。

丸山:1時間の会議の中で取り上げられる議題の数や人数は、決まっているんですか。

藤村:いえ、都度違いますね。

丸山:その場合は、会議の進め方について、藤村さんの経験則から導きだした方法論があるんでしょうか。

藤村:それも特にないです。アジェンダを組んでもその通りにいかないことは多いですしね。

時間通りに全てを終わらせる必要があるとは思っていなくて、まずは「こんな企画があるんですけど」とみんなに振って、その中で盛り上がるものもあれば、盛り上がらないものもあるんですよね。

そこで、盛り上がっている企画の方が「多分面白いんだろうな」とか、「編集部のみんながノリノリでやってくれるかな」とか期待ができるので、そういう企画があれば、どんどん深めていく形です。そして、時間が来たら「また来週ね」というような運営をしています。

丸山:藤村さんがピックアップして、会議の場で投げてみて、みんなで話し合うということですね。

藤村:そうですね。そのなかで確度が高いなとか、これはやるべきだなとか思ったものについては、kintoneのアプリへ入れて、登録時に担当者を都度設けて、私との間でその企画を練り上げていきます。

丸山:ということは、いざ企画になると、基本は担当者の方を中心に進めていく形ですか?

藤村:その通りです。編集会議までは、アイデアを発散させるとか、ブレストを通じて、より可能性を広めていくために、私がファシリテーターを務めます。

編集会議を経た後に、実際に企画になりそうなものに関しては、「収束」させていくんですよ。そのアイデアを、どういうコンセプトにもとづいて、想定読者(ターゲット)にバリュー(価値)を提供すると、ユーザーに届いていくのか?という点は、担当者と私の間で壁打ちをしながら、ぎゅっと狭めていく感じでしょうか。

丸山:会議から、実際にコンセプトが固まるまでの期間は、どのくらいかかるものなのですか?

藤村:人によりけりですね。サクッと勘所を外さずに企画を作る人もいれば、逆に、企画自体を作ったことがない人になると一週間程度かかったりもします。

丸山:お聞きしているだけで、藤村さんの仕事量の凄さが見えてきますね(笑)

藤村:コミュニケーションばかり、とっていますね(笑)

◆1-2 価値あるアイデアを企画化するために抑えておきたい5つのポイント

藤村 能光さん

丸山:先程ファシリテーターとおっしゃいましたが、それが一連のなかで役割として続いているような感じですね。

藤村:はい。私が所属しているコーポレートブランディング部でオウンドメディアを運営しています。サイボウズはソフトウェアのメーカーですので、「ソフトウェアを開発して、それを営業やマーケティングで売る」というのがビジネスの柱です。それに対して、編集やブランディングの仕事は、自分達の価値を編集して第三者に届けるという、ちょっと新しい仕事になってきていると思っています。

編集部のメンバーはもともと広報やマーケティングをやっていた人が多く、多様なメンバーが編集部にいます。ほかのプロジェクトも兼務している場合も多く、皆が皆、「企画を作りたい」とか、「編集したい」というわけではありません。

こういったメンバー全員が「どんどん企画や記事を作りたい」というメディア企業のようなモチベーションを持っているわけでもありません。そのため、一人ひとり、楽しく面白い企画を生み出してくれるように、企画を作る敷居を下げることと、そのためのコミュニケーションを活性化するということが、私の仕事かなと思ってやっています。ですから、コミュニケーションをとる量は限りなく多いと思いますね。

丸山:基本的に別業務を持っていらっしゃる方が、自分の時間を割いてやるからには、そういうモチベーションがないと。

藤村:そこが凄く難しいなと思っていて、企画書を用意するなかではしっかりやります。具体的には、主に5つのポイントを書いてもらいます。

5つのポイント

まず、1つ目の「タイトル案」ですが、この記事を一言で表すとどうなるか?ですね。

次に、2つ目の「ターゲット」は想定読者です。「タイトル案」のコンセプトを誰に届けたいのか?という部分です。

そして3つ目の「バリュー」は、届けたターゲットにどういうことを言ってもらいたいか?です。

ただ、普通の企画書でも「タイトル案」「ターゲット」「バリュー」はあると思うのですが、サイボウズ式としては、そこに「コンテクスト」と「思い」の2つをつけていて、これが非常に重要かなと思っています。

4つ目の「思い」は、「なぜ、あなたがこの企画をやりたいのですか? 好きな気持ちをぶつけてください」と。企画なので、自分が好きな事とかやりたい事をやらないと、その企画が面白いものにならないんじゃないかと思っています。

「やらされ企画」というのは凄く面白くないというか、誰も幸せになれない。やっている人も、読んだ人もつまらない。その人がまず「やりたい!」とか「こういう事を知りたい」という思いを書いてもらいます。

ただ「思い」とか「やりたい」だけだと企画にはならないので、そこに5つ目の「コンテクスト」を加えるんです。

なぜサイボウズ式としてこの企画をやる理由があるのか?「やりたい」という気持ちと、「サイボウズ式としてやるべきこと」というコンテクストを繋げるのを、私と担当者で話し合います。

丸山:このシートは、運用をされていくなかで「あった方が良いのでは?」ということで、生まれてきたのでしょうか?

藤村:そうですね。最初は「タイトル案」「ターゲット」「バリュー」の3つしか作っていませんでした。企画担当者と私の間で、何かうまく共通の認識が作れないなと思ったので、後の2つを足してみたところ、割と「その人のやりたいこと」と「サイボウズ式としてすべきこと」を接着できるようになりました。

サイボウズ式は記事に全部コンテクストを入れています。「なぜサイボウズ式として、今この記事をやるべきか?」と。なので、見る人が見れば、「これはやっぱりサイボウズ式っぽい記事だね」と思って開いたら、やはりそうだったという。

丸山:そうですね。確かに良い意味で「ぽさ」が表れていますよね。

藤村:それがサイボウズという根本の企業ブランドを築いていく要因にもなりますし、メディアとしての背骨を作るものだとも思います。コンセプトにも一貫性をもたらす結果に繋がります。ここはこだわって、時間をかけてやっていますね。

『サイボウズ式』編集長 藤村さんの社内を巻き込むコミュニケーション仕事術 第2話:社内外でオウンドメディアへの評価を熟成させていく仕組みづくり」につづく

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